Vol.115 解散総選挙と北朝鮮情勢
- ご挨拶
冒頭、会社のことに少し触れさせて頂きます。
10月5日に東京証券取引所マザーズ市場に上場致しました。
マネジメントの父と呼ばれるドラッカーが語った言葉・・・
企業は社会のものであり、マネジメントの役割は、
「第一に、それぞれの組織に特有の社会的機能をまっとうする」。即ち、事業を通してよい商品・サービスを提供し、社会に貢献すること。
「第二に、組織に関わりをもつ人たちが生き生きと生産的に働き、仕事を通じて自己実現できるようにすること」。
「第三に、社会的責任を果たすこと。その一つが、世の中に悪い影響を与えないこと」であり、「もう一つ、組織の強みを用いて、社会の問題の解決に資することである」。
(出典・参照:『ドラッカー入門 万人のための帝王学を求めて』上田惇生著 ダイヤモンド社 P106-108)
を肝に銘じ、社員と共に精進して参りますので、よろしくお願い致します。
とはいえ、このブログはこれまで通り、基本的に社業と関わりなくテーマを選び、私なりに考えたり、学んだりしたことを綴っていきたいと思います。考え方は人それぞれですので異論もあろうかと思いますが、それも含めて考える機会にして頂ければ幸いです。
- 解散総選挙~新党の離合集散を考える~
安倍首相が衆院解散を正式表明した9月25日から三週間、政党がガラガラと変わりました。
首相の会見前に、小池都知事が「希望の党」を立ち上げ、代表に就任。ここまでは維新の会の例もありますからよいとして、同時に「政権選択選挙になる」と発言されました。
「政権選択選挙に」小池氏、会見で表明 都職員「寝耳に水」 :日本経済新聞
次に驚いたのは27日、希望の党が「寛容な改革保守政党を目指す」と打ち出したこと。
「改革保守」新しい四字熟語の誕生です。
政治の対立軸に「保守と革新」がありますが、一字違いでその両翼を取り込んだ格好です。
そのキャッチフレーズ通り、翌28日に民進党の両院議員総会で希望の党への事実上の合流を満場一致で決定。
ところがその後、民主党左派を巡って小池氏が排除の論理を持ち出すと、彼らはさらにもう一転し「立憲民主党」を立ち上げます。
それを契機に、党首討論や国政への転身否定を経て「希望の党」ブームが陰り、小池氏は、
・「都民ファースト」を掲げた都知事でありながら、築地市場の移転や五輪準備など都政は停滞。その中での国政政党の代表就任。
・政権選択選挙を掲げながら、代表である自分は立候補せず、首班指名先も明示しない。
という矛盾を指摘されています。
また北朝鮮危機を踏まえると、在日米軍と並んで東京はミサイルのターゲットにされる可能性が高い。本来は、対立よりも政府と協力して有事の際の避難計画・訓練・対策を整えることが自治体の重要課題です。それが進んでいないという現実も都民は引き受けなければなりません。
加えて、否定はされているものの「選挙後の民進党への再結集」という話が出てくるに至って、「何でもあり」の様相を呈しています。
君子は豹変す。
本来、「君子は自らの過ちに気づいた時には、心を入れ替え、行動を変える」とよい意味で使われるのですが、「自分の都合によってコロコロ態度を変える」という誤用が増えているとのこと。こちらは単なる不誠実ですね。
以前もお話したように、「誠実さ」は、約束を破らず、嘘がなく、裏切らないといったように、自分の言動に「一貫性」を持つことです。
Vol.39 大切な資質:「誠実さ」 について - 社長の「雑観」コラム
そして、自身の間違いに気づいて言動を変えるべき時、「誠実さ」を担保するのが「説明責任」です。
政策と同時に、各候補の「誠実さ」を過去の言動から汲み取って、選挙に臨むことも大切だと思います。
- 解散総選挙~安倍政権の矛盾を考える~
とはいえ、説明不足や矛盾は安倍政権も抱えています。
もっとも説明不足とは、既に司直の手が入っている「森友問題」、加戸証言でハッキリした「加計問題」ではありません。
争点です。
争点を語る際に「消費税増税後の使途変更」など持ち出さず、最初から「北朝鮮危機に対し、日本がどういう対応を取るべきか」を語るべきだったと思います。主たるテーマについて、世論の風を伺いながら変更するというのは感心しません。
そのため首相や政府与党から「リーマンショック級」の事態が起こったらなどと留保をつける発言が生まれることになりました。
また「国難突破解散」の国難を、「北朝鮮情勢」プラス「少子化」と定義することになり、少子化対策のための使途変更とした訳ですが、ここに矛盾が生まれます。
消費増税すれば「消費」が減り、景気低迷によって「投資」も減少、デフレ脱却にマイナスであることは、この三年半で体験済みです。
そして、デフレによる所得減少は「少子化」対策にも逆効果。
これについては、経済評論家:三橋貴明氏のブログを参照しましょう。
『日本の少子化の主因は、文句なしで「婚姻率の低下」になります。1970年代は10前後だった婚姻率(人口千人当たりの婚姻件数)が、2014年に5.1まで下がり、2015年も同じく5.1。
なぜ、結婚が減っているのか。
18歳から32歳までの未婚者を調査すると、「いずれ結婚するつもり」と答えた者の割合は、男性が85.7%、女性が89.3%。実は、この値は他の先進国と比較して「高い」数字なのです。
日本の若い世代の結婚願望は、決して低くありません。それにも関わらず、結婚が増えない。
理由はもちろん、所得水準が下がっていっているためです。』
少子化が国難というならば|三橋貴明オフィシャルブログ「新世紀のビッグブラザーへ blog」Powered by Ameba
アベノミクスは、雇用や株価などの光の部分と、デフレ脱却・所得向上ができていないという影の部分を抱えています。
五年間「アクセル=金融緩和」を踏みつつ、四年間「ブレーキ=緊縮財政(最大のものが消費増税)」も同時に踏んできた結果です。
希望の党、維新の会、立憲民主党が消費増税凍結を謳ったことで、根っこにある経済政策の問題について、議論が交わされればと思ったのですが、希望の党・維新の会も同時に緊縮財政を掲げる(立憲民主党は不明)矛盾を抱えているので、余り期待はできません。
但し、「20年デフレ=緊縮財政至上主義による経済失政の歴史」という観点で(も)振り返ることが重要だと思います。
- 北朝鮮情勢と「政治」
一方、北朝鮮情勢は緊張を増しています。
9月18日:マティス米国防長官が、『韓国の首都ソウルを北朝鮮の報復で「重大な危険」に陥らせることのない軍事的手段がある』と発言。
【北朝鮮情勢】ソウルを危険に晒さぬ軍事手段「ある」 マティス米国防長官が言明 - 産経ニュース
10月1日:北朝鮮との対話に前向きな姿勢を示したティラーソン国務長官に対して、トランプ大統領が「時間の無駄だ」と否定。
10月2日:サンダース米大統領報道官が、『北朝鮮に3人拘束されている米国人の解放を巡る交渉だけが「唯一ある話し合いだ」と説明』
「いまは対話のときではない」 対北朝鮮で米大統領報道官 (写真=ロイター) :日本経済新聞
10月5日:トランプ大統領が『米軍幹部との夕食会に関し、「嵐の前の静けさ」かもしれない』と発言。
トランプ米大統領:「うまくいくのは一つだけ」-また北朝鮮を威嚇 - Bloomberg
10月9日:マティス米国防長官が陸軍将兵らを前にした講演で、
『外交や経済圧力による解決に失敗した場合は「大統領が軍事的選択肢を必要とした場合に確実に実行できるよう準備を整えておかなくてはならない」』
『「米陸軍としてできることをやろう」と語り、有事に備えるよう訴えた。』
【朝鮮半島情勢】マティス国防長官、陸軍将兵に「大統領の軍事的選択に備えよ」「将来は誰も分からない…」 - 産経ニュース
といった具合。アメリカ任せにしてはいけませんし、任せたところで生じる影響は引き受けなければなりません。ならば極めて「政治的」に動く必要があります。
「政治的」という言葉には、
・駆け引きし、策をめぐらすさま。
・理論だけで行動するのではなく、実際の状況に基づいて物事を処理するさま。
という意味があります。
悪い含みで使われることが多いのですが、安全保障や経済政策、即ち、国民の安全と豊かさのためであれば「策を巡らし」、机上の空論ではなく「実際的に対処」することこそ、むしろ政治にお願いしたいことです。
「何でもあり」の状況では議論もままなりませんが、政治家がこぞって「風」を読む以上、有権者の考え方が重要なのも事実。
そこに光明が生まれればと願う総選挙です。