社長の「雑観」コラム

MS&Consulting社長、並木昭憲のブログです。 未来を担うビジネスマンや学生の方々に向けて、 政治・経済・社会・経営などをテーマに書き進めています。

Vol.50 拉致問題・領土問題と民主主義・国家主権を考える

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 社長の並木です。先日、独立総合研究所社長の青山繁晴氏がインサイトコラムというラジオ番組で心に刺さる発言をしていらっしゃいました。考えるキッカケにして頂ければ思いますので、今回はその内容を中心にご紹介します。

 

  • 日本の主人公は日本国民

 以下の出典は6月11日放送の『青山繁晴 インサイトコラム』です。その前半の「国政に対する考え方」と「拉致問題」について発言された部分を、できるだけ青山氏の言葉を引用しながらまとめてみました。
https://www.youtube.com/watch?v=dCxEu7KEAWY
 「今年前半は特に外交面で様々な動きがあった」と水を向けられた青山氏は、今年の後半もそれは続くだろうとした上で、次のように語ります。
 「安倍総理も本当は私たちの代理人に過ぎません。日本の主人公は僕たち、普通の日本国民だけです。主人公ということは、実は最終責任者です。僕らはいろいろな意見の違いがあり、収入、年齢も違うわけですけれど、等しく日本に生まれ、あるいは日本国籍を取られた方、日本国民が日本の最終責任者です。その最終責任者である私たちの判断が問われる、今年の厳しい後半戦になる可能性があります。(これから起こり得ることを)幾つかお話ししておきたいのですが、それは自分はそのときどう考えるのか、どう決めるのかをあらかじめ準備していただきたいからです。」

 拉致問題に関する部分を続けます。今年後半戦に起きる可能性のあることの第一は、

 「拉致被害者のごく一部の帰国です。(北朝鮮による拉致被害者の)全面再調査という新しい動きが出てきます。しかし、政府認定の拉致被害者の方々と特定失踪者の方々が一気に今回、全員帰ってくることは(北朝鮮の独裁体制は変わっていないので)残念ながらあり得ません。
 そして、一部の方が、ものすごい騒ぎと報道の中で日本に帰ってきたとき、私たちがそれをどう受け止めるか、判断するかということがまず問われます。
 この番組は報道番組ですが、あえて僕個人の意見を一点だけ申しておきますと、『それ(一部の方々の帰国)で終わりにするかどうか』を私たちが判断するということは絶対にしてはいけません。先ほど申しましたとおり、僕たちにどんな違いがあっても全員同じ最終責任者ですから、どなたかを勝手に見捨ててしまえば、そこで日本はお終いです。二度と国民国家と呼べなくなります。子供たちに手渡す国ではなくなってしまう。これで終わりなのか、終わりにしないのかという判断はあり得ないんです。
 第一段階としてはやむを得ざることとして、ごく一部の人の帰国でも認めるのかどうか、そうではなくて、あくまで全員を段階的にでも帰すという保証をとらない限りは前に進めるということをしないのか。その判断がこの秋以降あるいは冬までには問われるということをまず一緒にお考えいただきたいんです。」
 前半は民主主義国家の主権者として大切な視点ですし、拉致問題国民国家の主権者として特に重要な問題です。皆、不当に拉致された方々の全員帰国を願っていると思いますが、上記の本質的な問いかけ以外にも、それに向けたステップや条件となると意見の違いが出てくるのではないでしょうか。「最近政府から発言が出はじめた、日本の北朝鮮に対する独自制裁三項目の『同時』解除は早すぎるのではないか」「全面再調査だけでなく、犯人引き渡しを要求しないのか」「帰国に際し、経済支援(資金供与)が条件になったらどう考えるか」「(北朝鮮には核問題もあるので)その際、アメリカなどが反対したらどうするのか」など考えておくべきことはたくさんあります。

 

 二つ目に挙げられたのは北方領土問題です。こちらは趣旨の要約とさせて頂きます。メディアの問題や北方領土をめぐる外交戦略上の失敗などについても触れられていますので、より詳しく知りたい方やニュアンスを確認したい方は、動画をお聞きください。
 「一部メディアではウクライナ問題に対する日本の対応によって、プーチン大統領が11月に予定されている来日をしないという報道もありますが、(青山氏なりにインテリジェンスとも接触してつかんでいる話では)プーチン大統領は来日したいという意思を強く持っています。そして、来日時に手土産として、北方領土に関して、あくまで例えばですが、将来的には歯舞・色丹という面積の小さな島二つの返還、国後・択捉については(主権の問題を棚上げして)日露で共同開発しましょうといった提案を持ってくる可能性もあります。
 外交交渉上、ゼロ回答も少ないけれども、満額回答はもっと少なく、通常あり得ません。つまり、日本が最初に(サンフランシスコ講和条約に当時のソ連は加わっていませんから、その前の条約を土台として、千島列島全島と樺太の南半分を含めて、交渉のテーブルに乗せていたらともかく)四島といってしまったため、四島返還は大変難しく、歯舞・色丹という面積の小さい二島返還や面積二等分などになってしまう可能性が高いのです。その状況でプーチン大統領が大胆な提案をしたときに、私たちがそれを認めるのかも問われることになるかもしれません。」

 

  • 国家の三要素と民主主義

 拉致問題は国民の生命・安全の問題、北方領土や(青山氏が四つ目に上げている)尖閣諸島は領土の問題です。そして、国家の三要素というのは国民・領域(領土・領水・領空)・主権ですから、右派とか左派とか、保守とかリベラルとかではなく、国家主権の問題であり、民主主義の問題であり、国際法の問題(拉致問題は勿論ですが、北方領土は日本がポツダム宣言の受諾を決定した後に、当時のソ連が占領したため)であり、国民国家の問題だと思うのです。
 民主主義のもとでは、国民が危機と機会を想定し、どうすべきかを「考える」ことがとても大切です。「危機など起こらない」とか「機会があっても自分には直接関係ない」、何かあったら「偉い人が何とかしてくれる」と構えることは、その時非常に優れた政治家ばかりを選べていたらよいですが、そうでなければ、保身とか私欲とかといった歪んだ動機に基づいている「かもしれない」決定が喧伝され、思考停止状態で付き従うという、以前紹介した「多数者の専制」や「全体主義」に陥ってしまうからです。
 もちろん、我々は政治家や学者ではありませんから、日々の生活で忙しく、あれもこれも考えている余裕はありません。ただ、この機会に、拉致被害者を自分や自分の家族に置き換えるなどして、これまで以上に切実に考えてみることも大切だと思います。

 

  • G1後の世界と民主主義

 現在、シリアやウクライナ南シナ海イラク問題などでもわかるように世界に対するアメリカの影響力が薄れ、冷戦後のG1と言われたアメリカ一極体制が変化しつつあります。国益が完全合致する国などあり得ないのですから、極が分散しつつある中で、自国で考えた外交を展開する必要があります(これも国家主権の問題です)。その点、先日来のアジア安全保障会議やG7など安倍政権には安心感はありますが、2002年小泉政権下での拉致被害者の帰国のことを思い出してみましょう。
 当初の日朝間の約束は拉致被害者の「一時帰国」に過ぎなかったのです。相応の「経済支援」も約束されていたと思います。それが「永住帰国」になり、現在の「経済制裁」につながったのは、当時内閣官房副長官だった安倍現総理や、同じく内閣官房参与だった中山恭子参議院議員の努力もありましたが、世論の力・国民の怒りの声が相当大きく影響した筈です。
 また、アメリカに目を転じてみても、ウォールストリートジャーナルとNBCニュースによる米国の世論調査では、「国際問題に関するアメリカの役割を減らすべき」だと答えた人が1995年および1997年の34%、2001年の14%から2014年には47%と最も高い数値になっているそうです。これもアメリカの国際的な影響力の低下に関係しているのかもしれません。

 このように、一人一票の選挙権(国民主権)がある以上、一人一人は微力でも、「どうせ変わらないんだから」と決め込まず、異なる意見に耳を傾けつつ、考え、意見表明を続けていけば、何らかの影響力が生まれると思います。