社長の「雑観」コラム

MS&Consulting社長、並木昭憲のブログです。 未来を担うビジネスマンや学生の方々に向けて、 政治・経済・社会・経営などをテーマに書き進めています。

Vol.14 「内需主導のデフレ脱却で世界に貢献する」

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 社長の並木です。前回、日本は巷で言われるような輸出立国ではなく内需大国であり、そこに着目した成長を目指すことで世界への貢献にも繋がるとお話ししました。今回はその点についてもう少し詳しく観てみたいと思います。

 

 ■不況下の輸出重視は近隣窮乏化策

現在は

2007年 サブプライムローン危機

2008年 リーマンショック

2010年 欧州債務危機

と続いた世界的なバブル崩壊の連鎖によって、世界金融危機と呼ばれる不況に陥っています。

バブル崩壊によって資産価格が暴落するため、企業や家計が借金返済に走らざるを得なくなり、投資や消費を行わなくなるため需要が不足し、デフレ圧力が増し、それが給与の低下や失業の増加に繋がりデフレ不況を深刻化させている訳です。金融政策を中心に対策を打ち、何とか世界大恐慌の再来にまでは至っていませんが、一つ間違えると多くの国で、日本がバブル崩壊の傷が癒えぬままに緊縮財政・規制緩和に乗り出した結果、1997年から15年間も抜け出せずにいるデフレスパイラルに陥りかねません。

不況になった際、「自国の需要が減った分を何とか輸出で取り戻そう」という発想は分からないでもありません。日本でも「アジアの成長を取り込む」という、実は相当に重商主義的な発言を政財界のリーダーが語っていました。

常識で考えて「輸入をする国があっての輸出」ですから、全ての国が貿易黒字で経済成長を成し遂げられる筈がありません。好景気ならともかく、世界的な不況の中でこれを行うということは「近隣窮乏化策」。即ち、輸出という手段によって、他国の需要・雇用を奪い取り自国の所得・雇用にするという性質のものです。

 

■単純な二極論に振り回されない

例えば、アメリカがすっかり空洞化してしまった製造業を自国に呼び戻す「リショアリング」を推進しているというのもこの流れですし、TPPという多国間の自由貿易協定を推進しているのも、農業のみならず、保険・医療・サービス・公共投資等の政府調達などの需要の奪取を企図しているのでしょう。

反対に報復関税や環境基準の厳格化・特許侵害訴訟などの非関税障壁で保護主義化が再燃する動きもあります。

政府としては、まず自国民の生活を守らなければなりませんので、様々な手を打つのは仕方ありません。

他国の策謀に負けないためには「自由貿易VS保護主義」「緊縮財政VS財政出動」「規制緩和VS規制維持・強化」などのAかBかの極論の選択ではなく、様々な中庸のバリエーションを認識し、その時の自国が置かれた環境によって打つべき戦略を考えなければいけません。自由貿易・緊縮財政・規制緩和至上主義ではデフレは脱却できません。一方、その逆だけではインフレ時の対策がおぼつかなくなるのです。

 

■自国の豊かさを取り戻し、世界に貢献する

『日本』は15年にもわたるデフレを経験していながら、近年名目GDPが下がったものの依然として世界第二の民間最終消費支出の規模を持ち(前回投稿の【表3】をご覧ください)、他国と比較をすれば相当低い失業率で(下の【表1】をご覧下さい)健全な中間層が比較的多く存在しています。また、震災をはじめとする自然災害が多く、道路の老朽化も顕在化している(すなわち公共投資も必要な)国です。

 

【表1】主要国と特に問題の大きいギリシャ・スペインの失業率推移

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 <失業率について>

現在、失業率は多くの国で重大な関心事となっています。金銭面でも精神面でも個人や家族の人生を狂わせてしまう上、国家の経済的・政治的な火種ともなるからです。

直近2012年12月のデータでは、ギリシャが26.8%、スペインが26.1%となり、世界恐慌時のアメリカの失業率(24.9%)を抜いてしまいました。そのアメリカも同月7.8%と高止まりしているため、先の大統領選の争点ともなりました。

その中で日本は4.2%で踏みとどまっています。日本的経営の良さがまだまだ残っているのですが、デフレ突入前夜の1994年までは2%台だったことを考えると、まだまだ改善できるはずです。

 

さらに、日本はスイスと並んで世界で最も安い長期金利で国債を発行することができます。建設国債による公共投資で国内経済に需要を生み出し、その経済効果によって民間企業が潤い、雇用状況の好転によって賃金増が実現することで、恒常的に消費と投資の規模が拡大し、安定的な経済成長ができるようになる。すなわち、デフレ脱却を実現することで名目GDPが増加し、「名目GDP×税率×税収弾性値」で表される税収が必然的に増え、財政の悪化にも歯止めがかかるという経済成長を、内需の拡大によって成し遂げるだけのリソースを持っています。

それが実現できれば、日本はデフレによって雇用や景気、財政が悪化して苦しんでいる国々へのヒント(デフレ下での緊縮財政は状況を悪化する。他国との軋轢を生む輸出拡大だけが解決策ではない 等)となることができます。そして、比較的健全な環境にいる国から不況を脱していけば、泥沼に足を取られてしまっている国からの「輸出」を受け入れ、結果として不況脱出の手助けをすることもできるのです。