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社長の「雑観」コラム

MS&Consulting社長、並木昭憲のブログです。 未来を担うビジネスマンや学生の方々に向けて、 政治・経済・社会・経営などをテーマに書き進めています。

Vol.13 デフレ脱却へ ~円安の功罪と内需重視への転換~

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社長の並木です。メディアは連日のようにアベノミクスによる円安・株高の話題を取り上げていますが、これまでお話ししてきたように量的緩和公共投資によって実需となり、デフレを脱却し、雇用が増え、給与が上がってようやく日本経済は健康体を取り戻せるのですから、短期的なことで一喜一憂しない方が賢明だと思います。
 
■円安誘導批判に対する麻生財務相の発言
 
そんな中、ドイツのメルケル首相らが「日本に対して円安誘導の懸念を表明した」したというニュースを読み、苦笑してしまいました。ダボス会議では甘利経財相が、

  • 2%のインフレターゲットは国際標準であり、
  • デフレの克服への対応について他国に先んじて処方箋を示し、世界に貢献する

という趣旨の発言をし、大勢の理解を得られたようですが、これについては一ヶ月前(2012年12月29日)のブルームバーグに麻生財務相の明快かつ痛快な発言が掲載されていますので、引用したいと思います。
 
『麻生財務相は自らが首相として出席した2009年4月の20カ国・地域(G20)首脳会談で、「通貨安競争はやらないという約束をしたが、その時の約束を守った国は何カ国あるのか。米国はもっとドル高にすべきだ。ユーロはいくらになったのか」と言及。1ドル=100円前後で推移していた当時に比べても円高水準にあると指摘した。その上で、約束を守ったのは日本だけだとし、「外国に言われる筋合いはない。通貨安に急激にしているわけでも何でもない」と強調。さらに「通貨が安くなるといって良かったと言っているのは輸出している人達だけ。輸入している人は通貨が安くなれば迷惑する」とも述べ、日本が意図的に通貨安競争を促す立場にはないとの認識を示した。』(出典:ブルームバーグ http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MFS7TA6K50XS01.html

さすがに当事者の発言は重みがあります。日本は約束を守ったのか、その後の政権が金融面で無策だったのかわかりませんが、リーマンショック後欧米が行った量的緩和に遅ればせながら合わせ始めているというのが実態です。自国のことを棚に上げたダブルスタンダードはやめましょうというところでしょうか。
 
■為替レートの推移
 
【表1】はサブプライム危機が叫ばれた2007年、リーマンショックの起こった2008年と2012年及び直近1月29日昼(当原稿を書いているタイミングです)の為替レートを比較をしたものですが、どの通貨をとってもリーマンショックが起こった2008年平均以上の円安にはなっていません。

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■円安の功罪
 
また、「良かったと言っているのは輸出している人達だけ。輸入している人は通貨が安くなれば迷惑する」という部分もその通りです。私は度々円安について書いていますが、為替の推移を見れば歴然としているように、余りにハードなスパルタを強い続けると輸出企業(日本の場合は多くが製造業)が身体を壊してしまうということを指摘しているだけで、通貨安競争をすることで輸出によって他国の需要を奪いとろうという姿勢にはむしろ反対です。
それにしても、このデータを改めて見てみると日本の家電メーカーは2007年対2012年で考えると、4~5割引セールが出来るサムスンやLGと戦っていた訳ですね。それでは危機に陥るのも仕方がないという見方も出来るでしょう。
 
円安はエネルギー資源を含む輸入価格の上昇に繋がるので、コストプッシュインフレを起こしかねません。増加したコストを吸収するために「人件費を削らなければ!」と言い始めると、デフレによる悪影響と何ら変わりません。インフレターゲットがエネルギー価格の上昇で達成しましたとなってしまっては何の意味もないのです。
 
ほんの1~2ヶ月の動きで一喜一憂したり、鵜の目鷹の目で儲けを狙ったりするより、「同様の量的緩和が行われれば適度な為替レートでバランスする筈だ」くらいに思っていた方が精神衛生上も良いでしょう。
 
今の政策が総理や大臣が話されているようにデフレ脱却のためのものなのであれば、公共投資による実体経済への誘導が行われるでしょうし、それで雇用環境が良くなれば失業率は低下し、給与も上がります。普通に働いている人が報われる。普通に生き、家庭を持ち、安心して子供を育てることができる社会であるということが、今を生きる人たちのためにも、将来世代の健全な価値観醸成のためにも最も大切なことです。
個々人の成長意欲、欲求はその基盤が成り立った上で発揮されてこそ、総量の増えない中で需要・所得を奪い合う経済ではなく、そういう人たちの先導によってマーケットそのものが大きくなっていくWIN-WINの関係が築けるのだと思います。
 
■輸出・グローバル化から「内需」に目線を戻そう
 
そもそも、日本は技術立国ではあっても輸出立国ではありません。【表2】はG7・BRICS・韓国の2010年における輸出依存度(GDPに占める輸出の割合)と輸入依存度(同輸入の割合)を示したものです。
日本の輸出依存度は少ない方から4番目、輸入依存度に至っては下から2番目です。

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それよりも、【表3】から分かるように、日本は民間消費(民間最終消費支出)だけをとっても、政府分も含めた最終消費支出全体で観ても世界第2位の規模がある、内需大国なのですから、そこに着目してこれからの経済運営と企業経営をしていくことが、日本や企業のためだけでなく、世界への貢献にも繋がるのだということを自覚すべきです。

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次回はこの辺りのことをもう少し深掘りしてみたいと思います。