社長の「雑観」コラム

MS&Consulting社長、並木昭憲のブログです。 未来を担うビジネスマンや学生の方々に向けて、 政治・経済・社会・経営などをテーマに書き進めています。

Vol.7 「デフレに関わる企業・国家の役割」~給与の低下と失業について(2)~

f:id:msandc:20121122182029j:plain

ポイント:仕事の目的は収入とそれを超える何かのため。国・企業には社会的責任がある。

  • 物価低下・給与減少・4~5%の失業率に「慣れ」が生まれている?
  • 国家はデフレ脱却によるパイの拡大を。企業・経営者は「針鼠の概念」による着実な成長と、従業員が働きがいや誇りを持ちやすい環境づくりが必要

f:id:msandc:20121122182254j:plain

【用語解説】

  • コアコアCPI…天候や政治等によって大きな影響を受ける食料(酒類を除く)及びエネルギーを除いた「消費者物価指数」で、私たち消費者が実際に購入する段階での、商品の小売価格(物価)の変動を表す指数です。

f:id:msandc:20121122144250g:plain

社長の並木です。今回も前回に続いて「給与の減少」「失業」ということにフォーカスしながら経済、それに関わる企業や国家の役割を考えてみたいと思います。

■「ゆでガエル現象」に似たデフレ慣れの怖さ

前回、1997年から2011年迄の14年間で日本の平均給与は467万円から409万円まで10数%低下してきたとお話ししました【表1】。給与が下がるということは自分の産み出したモノ・サービスの価値が下がるということで、「はたらけど はたらけど猶わがくらし楽にならざり ぢっと手を見る(石川啄木)」を地でいくような話でぞっとしません。勿論、個々の企業や人によって違いはありますが、日本全体で観るとそういう状況が続いているのです。デフレでその分物価も下がっているじゃないか、、、という見方もできますが、中長期を考えるとその考え方こそが危険なのです。蛙をいきなり熱湯に入れると飛び跳ねて逃げるが、水から時間をかけて熱していくと温度上昇を知覚できずに死んでしまうというのが「ゆでガエル現象」(http://goo.gl/Jjge)と呼ばれるものです(現実的には間違っているようです)。
長期に渉るマイナスの環境はこのゆでガエル現象に似た「デフレ慣れ」を引き起こしてしまい、以前お伝えしたデフレスパイラルを延々と甘受するようになってしまいます。

■失業率と自殺者数

更に失業となるとそのしわ寄せは更に大きくなります。まず収入が0になります(社会保障としての失業保険は得られます)。それだけでも大変なことですが、会社という共同体の一員として社会参画している存在としての自分を失ってしまうわけで、家庭やその他の共同体の中での心理的な変化・葛藤も生まれるでしょう。バブル崩壊後ジリジリと上がっていた失業率が4%に急増(デフレも顕在化)した1998年以降の自殺者数がそれ以前より毎年1万人も増えてしまったこと【表2】。特に、一家の大黒柱として働く確率の高い男性の自殺者の急増がそれを表しているようにも観てとれます。このように、仕事というものは経済的・心理的に大きな影響を与えるのです。

■仕事の目的は収入のためだけではない

別の視点で考えてみたいと思います。「人は仕事を得たいのではなく、収入を得たいのだ」という考え方がありますが、私は強い違和感を覚えます。人の幸福感を考えた時に「仕事に対するやり甲斐」というものはとても重要な要因になると考えているからです。職を失するというのは仕事も収入も両方失ってしまうわけで大きな苦痛を伴うことが想像できます。退職勧奨で精神的に参ってしまったという話も耳にします。一方、仕事に就いていてもただ収入のためだけに働いている色合いが強い人は、おおむね愚痴や不満が多くなります。少なくとも自分の日常生活の中で多くの時間を費やす仕事の中に価値を見出そう、生み出そうという意識を持っている人は気付きや感謝の心、成長実感や貢献実感が高くなり、より幸福感を感じられるのだと思います。

■「針鼠の概念」と「聴く耳」

以上を踏まえると、企業・経営者は第一に自助努力の中でリストラを余儀なくされるような状況を極力回避する必要があります。その為には瞬間最大風速的に得られた成果を自分の力だと過信せず、『ビジョナリー・カンパニー2-飛躍の法則』(ジム・コリンズ著、日経BP社)に記されているところの「針鼠の概念」つまり「自社が最高になれる部分はどこか」を理解して誘惑や自己欺瞞に負けず、背伸びをしすぎずに歩みを続けることだと思います。そして第二には、自社の従業員が働きがいや誇りを持ちやすい環境を作ることへの腐心を忘れないこと。そのために常に「聴く耳」を持つこと。これが重要な経営思想の一つだと思っています。

■デフレ脱却に向けた政策の実施

国家の役割はさらに重要です。企業がそのような想いを持っていたとしても、以前書いたように過度のスパルタ環境が続けば耐え切れないこともあります。だから、度々デフレ脱却の必要性をお話ししている訳です。減っていくパイの中で奪い合いをし、かつ国内の雇用も増やせというのではなく、パイそのものを拡大していく政策が必要です。失われた20年と言われて久しいですが、年3%の経済成長を20年間続ければ名目GDPは1.8倍の846兆円(対2011年468兆円)に拡大するのです。
国・企業・個人それぞれが支え合って、成長への道を歩むことが大事ではないでしょうか。