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社長の「雑観」コラム

MS&Consulting社長、並木昭憲のブログです。 未来を担うビジネスマンや学生の方々に向けて、 政治・経済・社会・経営などをテーマに書き進めています。

Vol.93 一致点を探す政治 ~経済対策と拉致問題~

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参議院選挙が終わりました。

今回、東京都選出議員の公約を読みながら誰に投票しようか悩んでいる時に、6歳の息子から「やって欲しいことってなぁに?」と質問され、口にしてみて改めて認識したのですが、「経済対策=公共投資を中心にした大型財政出動によるデフレ脱却と、拉致被害者の奪還」に重きを置いて投票しました。

皆さんは如何だったでしょうか?

 

選挙結果を受けて、安倍首相は「アベノミクスを一層加速せよという、国民からの力強い信任をいただいた」と会見されたようですが、消費増税以降の緊縮財政によってアベノミクスは失速しているというのが私の認識です。


また安倍首相は、「拉致被害者の方々とご家族の皆様が抱き合うことのできる日がやってくるまで私の使命は終わらない」ともおっしゃっていますが、被害者も歳を重ね、ご両親は皆さんご高齢になっていますので時間的な猶予はありません。

安倍総理「拉致被害者とご家族が抱き合うことができる日まで私の使命は終わらない」 拉致解決訴える国民大集会 | 外交再生 | 政府の主な動き | ニュース | 自由民主党

 

ある日突然、家族・人生を奪われてから30~40年。我々日本人はたった5人を、小泉政権下で現在の安倍首相や「日本のこころを大切にする党」の中山恭子議員のご尽力もあって取り返し、2年後にそのご家族も帰国を果たしたに過ぎません。自分事として捉えれば殆ど全国民が感じるように、文字通り一日も早い奪還が必要です。

 

今回はこの二点について考えてみたいと思います。

 

まず、経済対策です。

現在10兆円規模の補正予算、さらにはその増額が話題になっています。

私もこれまではデフレギャップ(=需給ギャップGDPギャップ)をベースに10兆円規模が必要と書いてきましたが、果たしてそれで十分でしょうか?

前回の投稿で紹介したように、英国のEU離脱の影響はGDPの0.34%~1.11%と試算されています。2015年度のGDPは500兆円強ですから2~6兆円に上ります。

 

私見ですが、経済政策に関して、どちらかというと公共投資の効果を重視される藤井聡氏(内閣官房参与)と、どちらかといえば金融政策の優先順位が高いと思われる高橋洋一氏(小泉政権および安倍首相の経済ブレーンの一人)が共に20兆規模、さらに3年程度の複数年の財政出動が必要と発言されているのは注目に値します。

アプローチは違っても真摯に現実を観ていれば、自ずと方向が定まってくるということでしょうか。

 

藤井氏は著書『国民所得を80万円増やす経済政策 ~アベノミクスに対する5つの提案~』(晶文社)の中で、日本のデフレギャップについて、

補正予算が3兆円支出されている状況で、過小評価される事が知られている計算方式で現時点で8兆円という数字が内閣府より報告されているため、どれだけ低く見積っても11兆円、適正な水準を想定するなら15~20兆円程度は軽く上回るデフレギャップが実存しているものと考えられる』(P227)

と書かれています。内閣府が直近で発表したGDPギャップは2015年度で▲1.2%ですから、執筆時から2兆円弱減っていると思いますが、英国のEU離脱の影響はそれを上回ります。

 

また、文中の「過小評価される事が知られている計算方式」とは何でしょうか。

これはデフレギャップの計算式「現実のGDP-潜在GDP」において、潜在GDP

・最大概念の潜在GDP=現存の諸資源(労働および資本)を「完全利用」した場合の産出量

・平均概念の潜在GDP=「過去平均」の諸資源の投入量に応じた産出量

という二種類が考えられ、日銀も内閣府も後者を使って算出しているというものです。

詳しくは、経済学者:青木泰樹氏の書いたブログをご覧頂ければと思いますが、過去平均を使えば、当然ギャップは小さくなります。

【青木泰樹】2つの潜在GDP | 三橋貴明の「新」日本経済新聞

 

このように政府統計といえども、そこに例えば「緊縮財政主義」といった主義主張が表れ、データが取捨選択されます。

主観から逃れることは誰にもできないものの、それを認識して「理論・学説」よりも「現実」を重視する姿勢を持つことはできます。

 

日本は、1980年代終盤、米国からの要求もあって、好況下で公共投資を増加させるという愚を犯し、バブルを加速させました。バブル崩壊後、更に公共投資を増加させ景気を下支えしたものの、橋本龍太郎政権下の1997年から緊縮財政に舵を切ってデフレに突入。その後、不況期の公共投資減という逆の愚策から20年間抜け出せていないのですから尚更です。

 

戦力の逐次投入も愚策です。デフレ脱却に向けて、十分な脱出速度のつく規模の経済対策を、生産年齢人口減少を乗り越えて経済成長を果たし、防災・安全保障を確かなものにするための、インフラ・技術開発・教育・エネルギー開発といった長期投資(長期投資であれば、必然的に複数年の財政出動につながります)を中心に、育児・介護・医療など、より身近な問題とのバランスを取りながら行って頂きたいと思います。

 

次に拉致問題について。

これに関して、今回の参院選で当選された青山繁晴氏が大変重要な問題提起をしています。

青山氏の街頭演説です。40分程度ですので、時間を許す方はご覧下さい。

【青山繁晴】参議院選挙 街頭演説 大阪・難波 高島屋前 2016.7.9 - YouTube

 

  • 一致点を探す

青山氏は、上記動画の11分少し前くらいから、

<演説内容をもとに並木要約>

『どこの国でも国民が隣の国に拉致誘拐されれば、必ず取り返しに行く。取り返しに行くから相手の国はその国の国民を拉致したりしない。

しかし、日本は国民を100人以上も拉致されているのに取り返しに行かなかったから次々に事件が起きた。犯人は北朝鮮だけれども、本当は、取り返す国にしなかった日本の政治の責任であり、そこには与党も野党もありません。

取り返しに行けるようにするには、何よりも憲法を最低限度変えることが必要だったんです。しかし、この参院選でも憲法拉致事件を争点にしなかった。

これは、誰かが悪かったと言いたいのではなくて、自分も含めて僕たちが思い違いをしていただけです。「選挙は戦い、足の引っ張り合いであって、政治は党派に分かれて争うことだ」というのは、弱肉強食を常とする西洋の考え方です。日本のまつりごと、政治は逆に一致点を探すことです。

拉致被害者、例えば横田めぐみさん、有本恵子さんの人生を取り戻す。その為に一致点を探して、自衛隊を救出に出せるような憲法にする』

ことも可能ではないかと訴えます。

 

「一致点を探す」。国家や政治を考える際、とても大切な出発点だと思います。

とはいえ安保法制の際、与党は本質的な問題提起を避け、野党は「戦争法」という印象操作で対抗、憲法学者憲法違反か否かで終始して、拉致問題や増加する中国の脅威に対して、どうすべきかという議論が進まなかった現状を鑑みると、紛糾することは間違いありません。

一概に混乱が悪い訳ではありません。「ものを言えない空気」「本質を語らない体質」「感情を煽って議論を成立させない手法」の方が問題ですが、とはいえ時間はかかります。

 

それにも青山さんは実務家らしく、具体論を提言されています。(20分頃から)

<演説内容をもとに並木要約>

『野党の議員とも話し合って、僕と連帯して超党派で政府・安倍総理に質問状を出します。

これまでは民間人の立場で質問したけれども、答えが返ってこなくても仕方なかった。

しかし、国会議員になって正式な質問状=質問主意書を出したら、政府は必ず回答しなければいけなくて、その回答は閣議で決定されるんです。そこで決めたら国の方針です。

「今の憲法でも、戦争してはならないと同時に、自国民を守るということはまさか無視していないから、自衛隊北朝鮮に行って、拉致被害者の救出作戦を行うことは、戦争ではなくて、国際法が認めた正当な救出行動だから、今でもできますよね」と質問を出して、安倍内閣が「そうです。できます」という答えを出したら、戦争に近づくんではなくて、したたかな北朝鮮も水面下で初めて交渉に応じます。』

と語ります。拉致問題にも真剣に取り組んでこられた方の実体験に基づいた発言ですから説得力がありますし、暗闇に光明を見た想いです。

 

主義主張に囚われて感情的になれば議論が成り立たず、「数の論理」か「足して二で割る」的な政治決着しかできません。現実を直視して、異論の中に一致点を見出すような努力を続けていけば、より良い日本を育んでいくことができるのではないでしょうか。