Vol.89 熊本・大分地震と拉致問題:「危機」と「機会」
熊本・大分の地震で犠牲となられた方々のご冥福を祈るとともに、被災された皆様に心からのお見舞いを申し上げます。
- 熊本・大分地震
まず、作家・評論家の佐藤健志氏がブログで紹介されていた、熊本市付近にお住まいの中村龍也さんという方のフェイスブックを引用させて頂きます。
<以下引用>
【お願い】
熊本を支援してくださる皆様へ
可能な限りでいいんです!
◇熊本県産を買ってください!
◇熊本の会社から買ってください!
◇熊本に遊びに来てください!
『今』必要なんです!
心からのお願いです。
そしてこれは
県外の方だけに伝えてるんじゃないんです
熊本に住んでる方こそ、そうして欲しいんです!
価格や便利さだけで買わないでください
1円でも多く熊本に落としてください
無関係だと思わないでください
全てつながってるんです!
熊本は、今一つになれなきゃ
もうなれない気がします
どうか、どうか、お願いします!
<引用終わり>
中村 龍也 - 【お願い】 熊本を支援してくださる皆様へ 可能な限りでいいんです!... | Facebook
被災地に心を寄せるだけでなく、我々一人一人が熊本・大分県産、そして東北産のものを買うことが被災地の復興につながります。東日本大震災の時の教訓を生かし、自粛よりも支援(買い物・旅行・寄付・ふるさと納税等々)を心がけたいと思います。
- 国家の役割
安倍政権の震災対応が安心感のあるものだったことは不幸中の幸いです。
東日本大震災の反省に基づき、「道路や土砂災害現場の復旧など自治体の事業を国が代行できる」という大規模災害復興法が2013年に施行されており、その適応を受けられるというのも大きいでしょう。
熊本の復旧工事、国が肩代わり 大規模災害法を初適用 - 西日本新聞
今回の震災でも、対策の司令塔機能を担うべき、幾つかの市庁舎が使用不能になりました。その原因は自治体の「財源不足」だそうです。
検証・熊本地震:/2(その2止) 庁舎耐震化に財源の壁 被災後使えず「想定外」 - 毎日新聞
まず被災地、その後も計画的に日本各地の主要施設の耐震化を国が率先して進める位の対策が必要ではないでしょうか。
また、ほんの一例に過ぎませんが、安倍首相は被災地視察でも、しっかりと避難民の方々と目線を合わせて激励されたようです。
平成28年4月23日 熊本地震による被害状況視察のための熊本県下訪問 | 平成28年 | 総理の一日 | 総理大臣 | 首相官邸ホームページ
ご記憶の方も多いでしょうが、東日本大震災の際、当時の菅首相は避難所を足早に歩き去って顰蹙(ひんしゅく)を買い、福島では避難されている方から「もう帰るんですか?」「無視していかれる気持ちってわかりますか?」と直接非難されました。
【原発】菅総理に住民から怒りの声 福島の避難所(11/04/21) - YouTube
そして国会では財源と復興増税の話、、、
災難が降りかかったとき、最大限国民を守ろうとしないのであれば国家ではありません。
にも関わらず、総理大臣が避難生活を余儀なくされている国民をないがしろにし、国民の代理人である筈の国会議員が、まずお金の心配をする、、、この国はどうなっているのかと絶望的な気持ちになったものです。
今回だって過信は出来ません。復興の財源に金融政策による金利低下に伴う国債利払い費の減少分を充てるといった報道を目にしますので、「まず財源ありき」というメンタリティからは抜け出せていないのです。
【熊本地震】復旧財源に国債利払いの減少分 政府が補正予算で検討 - 産経ニュース
となれば、財源云々の話は脇において「国民を守るために」普通に建設国債で復興を進め、さらには将来の被害を最小化するために、全国各地の防災・耐震化を、、、という議論になるかは甚だ疑問です。
そもそも、熊本で震災が起こる可能性について、知っていた人がどれ程いたのでしょう。
私が不勉強なのかも知れませんが、熊本は地震が少ない地域という印象です。熊本出身の知り合いにも聞いてみましたが、子どもの頃から地震に遭った記憶は殆どないとのことでした。
ということは想像力を働かせてみれば、日本国内の殆どの地域に同じような災難が降りかかる可能性があるということです。決して人ごとではありません。
熊本・大分、そして東北の復興に支援する一方で、まだ来ぬ災害への備えを国家全体で行う必要があるのではないでしょうか。
冒頭にご紹介した佐藤健志氏もブログで、
「消費税率の引き下げか、最低限、8%での凍結」が必要なのに、
「消費税率の引き上げ延期をめぐる議論すらどうも聞こえてこなくなっている。」ことを憂う文脈の中で、
「今一つになれなきゃ、もうなれない気がします。
これは熊本のみならず、日本全体に言えることではないでしょうか。」
と結んでいます。
(「 」部出典:佐藤健志氏ブログ。改行部を並木修正)
熊本の声と消費税減税 | 佐藤健志 official site ”Dancing Writer”
「日本が一つになって国民を守る」という文脈で忘れてはならないのが「拉致被害者の奪還」です。
そして、その為に避けて通れないのが憲法改正、特に9条の問題です。
今はゴールデンウィークとして一括りになっている感が否めませんが、5月3日の憲法記念日は1947年(占領下であるにも関わらず)日本国憲法が施行された日です。
その憲法9条には「国権の発動たる戦争」と共に「武力による威嚇又は武力の行使」も「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とあり、
第2項は「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」となっています。
その為、金正日前総書記が「国による拉致への関与」を認めたにも関わらず、あるいは「武力による威嚇を国際紛争の解決手段として使えない」訳ですから、むしろ認めたからこそ、取り返しに行くことが出来ず、ひたすら話し合いによる解決、しかも拉致を行った当事国に対して、経済制裁と金銭的解決(言い換えれば身代金です)以外には交渉材料を持たない話し合いを続けなければならないのです。
そして、例えば当時13歳で拉致された横田めぐみさんは今年52歳を迎えます。
こちらも決して人ごとではありません。我々自身が当事者の一人になったかもしれないという想像力を失ってはならない問題です。
憲法改正について、夏の参院選の争点になるか否かが巷間で取り沙汰されていますが、改正草案を出している自民党でさえ、国論を二分しかねない9条は勿論、憲法改正そのものの争点化にも慎重です。
http://mainichi.jp/senkyo/articles/20160503/ddm/005/010/046000c
目の前に迫っている選挙のことはともかく、国民の代理人たる政治家である以上、参院選とは別問題としてでも、拉致を始めとした国民の生命と安全に関わる問題について、しっかりと事実を示し、イデオロギー論争ではない国民的な議論を深めることは重要な役割だと思います。
今の憲法下で経済成長し、安穏と暮らしてきたように見えて、拉致被害者が生まれ、取り返せない現実もある。
領空・領海侵犯をされても国際標準の対応をとれない現実もある。
憲法9条第2項を素直に読めば、現在は“いわゆる憲法解釈”で対応している自衛隊の存在にすら疑問符が付く。
アメリカの世界戦略・安全保障政策も変わりつつある。
こうした中で如何に自分や自分の子ども達を含めた国民を守っていくか、、、という議論です。
- 危機と機会
「危機」の「危」という字の語源(字源)は、崖の上でうずくまる人。
「機会」の「会」の旧字体「會」は蓋のある鍋。その鍋にいろいろな物を入れることから会う、集うという意味になったそうです。
何かのキッカケ=「機」があったとき、一人うずくまってしまえば「危機」となりますが、皆で問題を共有・整理して建設的な議論を交わせれば「機会」となり得ます。
建設的というのは、同じ目的に向かって、ディベートのように勝ち負けを競うのではなく、自分の体面を気にしたり、私利私欲のために誘導したりするのでもなく、知恵を集めて、より良い解決策を見出すといった意味です。
拉致被害者は必ず取り戻さないといけません。
また、復旧はできる限りのスピードで行うべきですし、今後への備えも必要です。
我々は「喉元過ぎれば熱さを忘れる」となりやすい存在ですから、常に過去から学び、未来を築いていかねばなりません。
その為に、異論を封殺したり、本質的な議論を避けたりするのではなく、普通に語り合える風潮をつくっていけないものでしょうか。