社長の「雑観」コラム

MS&Consulting社長、並木昭憲のブログです。 未来を担うビジネスマンや学生の方々に向けて、 政治・経済・社会・経営などをテーマに書き進めています。

Vol.83 波乱の年明け

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今年最初の投稿となります。何とか小正月には間に合いました。

遅ればせながら、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 

しかし残念ながら年末から年明けにかけて、余りおめでたくない出来事が頻発しています。

昨年末の投稿で、安倍政権新自由主義的な政策を批判しつつ、金融・外交政策については賛成することが多いとコメントしたのですが、その直後の日韓外相会談で、いわゆる“慰安婦問題”に関する合意がなされました。

そして年を明けてからまだ半月しか経っていないにも関わらず、中国株の急落、サウジアラビアのイランとの国交断絶、北朝鮮の水爆実験などが起こっています。昨年以上のスピードで、成長を続ける中国という幻想やこれまでの国際秩序の崩壊が進む一年になりそうです。

 

  • 日韓外相会談の共同記者発表

さて、年末の「いわゆる“慰安婦問題”に関する合意」については、日韓両国とも賛否両論が渦巻いています。

日韓外相会談後の共同記者発表の内容は外務省のホームページから確認できますが、

日韓外相会談 | 外務省

日本における反対側は概ね、岸田外務大臣が「軍の関与」に触れている点と国費投入の約束をした点を問題視し、賛成側は「今回の発表により、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認」したことを評価しています。これまで、何度も蒸し返されてきた歴史がありますから賛成側の主張ももっともです。今回は米国の関与ないしは圧力のもと、共同記者発表まで開いていますので、後々頬被りするのは確かに大変です。加えて、韓国の外交部長官の発表に「在韓国日本大使館前の少女像」(これは国際条約であるウィーン条約違反とも言われています)への対応や「国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える」とある関係で、日本よりもむしろ韓国側で世論が紛糾しているようです。

 

しかし、それらを踏まえた上でも私は反対です。最初に報道に触れたときには目を疑いました。

そもそも、いわゆる“慰安婦問題”とは、慰安婦の存在の有無を糾すものではありません。慰安婦を「軍」が朝鮮半島から「強制連行」したか否かです。朝日新聞などによって、いわゆる“従軍慰安婦”と呼ばれる由縁です。

現在の倫理観で過去を裁くことは出来ません。それを言い出したら、昨年話題になったベトナム戦争時の韓国軍に関する慰安所を取り上げるまでもなく、ほとんどの国の軍隊が有罪となります。

【歴史戦 第11部 もう一つの慰安婦問題(2)】ベトナム戦争時の韓国軍慰安所「売春宿、だまされて来た女性も」(1/4ページ) - 産経ニュース

ただ韓国はそのあたりを曖昧にしながら、欧米で“Sex Slave(セックススレイブ=性奴隷)”という印象的な言葉を使って喧伝している実態もあるわけです。

しかし戦後、学者をはじめ様々な人が調査しても「日本軍による強制連行」の証拠は全く見つかっていないのです。一昨年、朝日新聞も誤報を認めたことはご記憶の方も多いでしょう。

 

そういう事情がありますので、安倍首相とは主義主張の全く異なる村山富市(元社会党委員長。自社さ連立政権における総理大臣)政権下で発足した「アジア女性基金」も寄付で賄い、国費は投じていません。

岸田外務大臣がこうした歴史や事実を知らない筈がありませんから、「軍の関与」という言葉を使ったのは、日本国民に対しては、「強制連行ではなく、慰安婦の衛生管理といった関与(これも殆どの国の軍がやっていました)」、韓国内では「強制連行を認めさせた」という両国政府の説明ないしは言い訳のためでしょう。事実に基づいた「おわびと反省」ならともかく、曖昧な言葉で誤魔化し、我々の先祖や子孫の誇りを傷つけないで頂きたいと思います。

 

※この次に取り上げる北朝鮮の水爆実験についても触れられている、ニッポン放送のラジオ番組『ザ・ボイス そこまでいうか』1月7日放送:コメンテーター青山繁晴氏(独立総合研究所社長)をご紹介します。

2016年1月7日(木) ザ・ボイス そこまで言うか! 青山繁晴 - YouTube

4:05~18:35頃:いわゆる“慰安婦問題”に関する背景や青山氏の見解、欧米で流布されている情報などについて語られていますので、是非お聞き下さい。

 

この中で青山氏が「世界観が違う」と語っている通り、誤魔化さずに「軍の関与」に関する「事実」を世界に向けて発信して頂きたい。共同記者発表が行われてしまった以上、その事と「最終的かつ不可逆的な解決」を韓国政府と日本政府が守るように国民が注視することが次善の道だと考えています。

 

  • 北朝鮮の水爆実験とサウジ・イランの国交断絶

次に北朝鮮の水爆実験。現時点では水爆か否かや実験の成否は知る由もありませんが、青山繁晴氏が上記『ザ・ボイス』において語っている「(北朝鮮の)ビジネス」という視点は、特に拉致問題を抱える日本人は意識しておく必要があるでしょう。

 

北朝鮮の水爆実験に関しては上記リンクの19:05~25:10頃です。

 

話はまず中東に飛びますが、昨年行われた「イラン核合意」。イランの核開発を中止させたという報道がある一方、当初より、長期的且つ小規模な核保有を黙認する体制、ないしはそういう体制に変質する可能性があり、むしろ核拡散に向かうのではないかという懸念がありました。

それでも、自称“イスラム国”と戦うための「地上軍」を送れないオバマ政権は、イラン軍の力を借りるため合意を推進したのです。そして、この合意によって経済制裁が解除されれば、イランの原油が市場に表れ、現在の原油安に拍車がかかります。スンニ派・シーア派という宗教対立、アラブとペルシアという民族間の歴史に加え、核と経済(原油)の問題もあって、唐突に見えたサウジのイランに対する国交断絶となったのでしょう。

 

そして、イランの核開発は北朝鮮との協力によってなされています。青山氏の見解は、今回の北朝鮮の水爆実験は他に様々な要素もあるにせよ、第一義的には中東の緊張に対してイラン、さらにはサウジも視野に入れ「死の商人」となるためのデモンストレーションという見立てです。

 

  • 日本が進むべき道

さて、日本人が今後進むべき道、なすべき事はなんでしょうか。

これも青山氏が常々語っている「立場や考え方の違いはあって当たり前、その中で国民を二つに分けるのではなく、大きな目標で一致できる点を探すことが大切」という考えに大賛成です。

 

いわゆる“慰安婦問題”の合意は、安倍首相が70年談話で語って多くの国民に共感を得た「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。」という言葉に直接関わる問題です。

平成27年8月14日 内閣総理大臣談話 | 平成27年 | 総理指示・談話など | 総理大臣 | 首相官邸ホームページ

 

また北朝鮮拉致問題は切り離すことが出来ません。もし「ビジネス」が成功し、北朝鮮が経済的に潤うようなことがあれば、対話による解決の可能性や経済制裁の効果は薄れます。その中で、それでも拉致被害者全員を取り戻すこと。それも被害者のご両親がご存命なうちの生還を期待する人が国民のほとんどでしょう。どういう交渉が出来れば奪還の可能性が高まるか、議論を拡げていかなければ状況は変わりません。政府に期待するだけでなく、国民の後押しが必要なのです。

 

さらに、サウジとイラン。ペルシャ湾を挟んだ両大国で紛争が起これば、原油の輸入への影響が考えられます。何しろ狭いホルムズ海峡がすぐそばです。加えて、南沙諸島では中国が実効支配を強めようという野望を持ち続けています。

昨年11月、野田聖子議員が「南シナ海は直接日本と関係ない」と発言し、物議を醸しましたが、日本の輸入する原油の7~8割はこれらのシーレーンを通ってくることを忘れてはいけません。

【安倍政権考】呆れた不見識…自民・野田聖子氏の「南シナ海は関係ない」発言に批判の嵐 首相目指す資格問う声も…(1/4ページ) - 産経ニュース

ホルムズ海峡(ホルムズかいきょう)とは - コトバンク

残念ながら太陽光などの自然エネルギーは現状、安定電源にはなりません。万一の場合に備え、原発はどうするのか、シェールガスの輸入を進めるのか、メタンハイドレードなどの自前資源の実用化や蓄電等の技術革新を加速させるのかといった議論を進めておかないと、今後経済や生活そのものに支障をきたす恐れがあります。

 

アメリカの一極覇権という統治力は徐々に薄らいでいます。そうすると、世界では更に様々な動乱が起こるでしょう。その中で「国民」の生命と安全、さらには豊かさと「領域(領土・領海・領空)」を「主権」によって守るという国家の三要素、加えて他国(世界)からの承認も含めた国家の四要素をどのように機能させていくか、

国家 - Wikipedia

国民がこれまで以上に関心を持たないと危険な時代に突入しています。また、国民が分断された状態では力を発揮できません。とはいえ全体主義に走っては更に危ない。一つ一つ、多くの国民が一致できる点を探して、少しずつ状況を変えていく姿勢が必要です。直接実務を行うのは政治家や行政(官僚)ですが、政治家を選び、税金によって行政を養うのは主権者である我々国民だからです。

政治家の曖昧な言葉に誤魔化されないように注意し、異なる意見にも耳を傾け、一致できる点を探す努力を続けていきたいと思います。