社長の「雑観」コラム

MS&Consulting社長、並木昭憲のブログです。 未来を担うビジネスマンや学生の方々に向けて、 政治・経済・社会・経営などをテーマに書き進めています。

Vol.71 あれから一年、、、消費増税の悪影響と財政問題

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  • 2014年度GDP成長率

2014年度のGDP統計が発表になりました。

実質では前年比▲1.0%、名目で同+1.4%です。4月に消費税増税が行われた結果、(強制的に物価が上がったため)名目では前年を上回りましたが、物価変動による影響を除いた実質GDPはマイナスに落ち込みました。

実質GDPの内訳を見てみると民間最終消費支出が▲3.1%、民間住宅▲11.6%、民間企業設備▲0.5%となっています。消費増税が需要に大きく影響を与え、その結果企業の設備投資が進まないという傾向が見てとれます。「消費増税という政策の失敗」と言ってよいでしょう。

国民経済計算(GDP統計) - 内閣府

 

安倍政権は「デフレ脱却」を最優先課題とし、その為に異次元緩和と呼ばれる金融緩和を行っています。

では、デフレを脱却できたのかどうか、消費者物価指数を見てみましょう。

インフレターゲット2%を目標に掲げている日銀が指標としているコアCPI(生鮮食料品を除く総合指数)で+0.3%、コアコアCPI(食料及びエネルギーを除く総合)で+0.4%です。原油価格が大きく動くのが常態化していますので、本来はコアコアCPIで見るべきだと思いますが、ここでは日銀の指標に従います。

統計局ホームページ/消費者物価指数(CPI) 全国(最新の月次結果の概要)

確かにプラスにはなっていますが、日本経済新聞によると「昨年4月は電気代など公共料金で旧税率を適用する経過措置が続いたため、今年4月も増税による影響分(0.3%)が残った」ため、実質的には「増税の影響除き横ばい」=0%だそうです。日本は依然としてデフレの呪縛に囚われているということです。

消費者物価、4月0.3%上昇 増税の影響除き横ばい :日本経済新聞

 

第二次安倍内閣がスタートした2012年12月のコアCPI前年同月比は▲0.2%でした。

その後アベノミクスが奏功し、2013年12月~2014年3月には+1.3%に上昇し、2013年3月に日銀総裁・副総裁に就任した黒田東彦氏・岩田規久男氏が就任2年で達成すると“コミットメント”した2%のインフレターゲットも達成するかに見えました。

そして消費税増税。コアCPIは4月+3.2%、5月+3.4%に跳ね上がりますが、消費税増税の影響が2%はありますので割り引いて考えないといけません。その後はジリジリと下がって12月+2.5%、1~3月は+2.0~2.2%。今月、上記コミットメントの年限を迎えたわけですが、横ばいという結果に終わってしまいました。

岩田副総裁は2014年10月に反省の弁を、黒田総裁は2015年5月に(遅きに失した感はありますが)消費増税の影響が予想を超えた旨の発言をしています。

就任前の「目標未達なら辞職」発言、深く反省=岩田日銀副総裁 | ビジネスニュース | Reuters

消費増税の影響「予想超えた」、過度な円高は修正=黒田日銀総裁 | Reuters

 

私はコミットメント未達だから即、責任論という論調には与しません。以前よりも現在の金融政策の方が、経済に好影響を与えていることもまた確かだからです。一方、金融緩和策だけでデフレ脱却ができるという見方にも懐疑的です。発行されたお金が実体経済に向かうかどうか、政府や日銀には制御しようがないからですが、ここでは脇に置きましょう。

ただ、インフレターゲット政策というのは、市場の予想インフレ率(金融市場関係者・企業・消費者などが予想する将来の物価上昇率)に影響を与え、物価上昇を実現していくという性質上、「説明責任」が重視される筈です。お二人も増税に賛成ないしは許容をしていらっしゃったので罰が悪いとは思いますが、景気回復前の増税は元も子もなくすということを知らしめるために、あらゆる局面で「消費増税による悪影響」を訴えるべきだと思います。

 

  • 積極財政か財政緊縮か

現在の日本では財政健全化に向けて、景気回復論と緊縮財政(歳出削減や消費税再増税)論がせめぎ合っています。折角、アベノミクスによって好転した経済が、消費増税=財政緊縮策で台無しになったのですから、逆の積極財政で取り返すというのが王道だと思いますが、1997年に日本をデフレに突入させた橋本6大改革以降、新自由主義にもとづく緊縮財政思想が、政策立案に関与する方々の中に染みわたっているようです。

 

本ブログでは再三、日本国債が円建てである以上、日本の財政破綻(デフォルト)はあり得ない。物価や金利が急騰していれば国民生活に悪影響を及ぼしますが、インフレ率や長期金利が世界最低レベルの現状においては、財政問題を気にする必要はないとお話ししてきましたが、今回は別の視点からのデータをご紹介したいと思います。

 

  • 財政健全化のためにも必要な経済成長

下の表は、「世界経済のネタ帳」というサイトを利用させて頂き、日本・米国・イギリス・フランス・ドイツ・イタリアの政府総債務残高対GDP比率をグラフ化したものです。

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http://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=GGXWDG_NGDP&c1=JP&c2=US&c3=IT&c4=GB&c5=FR&c6=DE&s=1980&e=2015

 

確かに、日本の政府債務対GDP比は1992年あたりから急騰しています。つまり、バブル崩壊後の低成長下で悪化したわけです。試しに1991年と2014年の各国の名目GDPを比較すると以下のようになります。

・日本:1.02倍

・アメリカ:2.82倍

・イギリス:2.76倍

・イタリア:2.10倍

・フランス:1.95倍

・ドイツ:1.84倍(ドイツの2014年データはIMFによる2015年4月推計)

(出典:世界経済のネタ帳)

その差に驚かされますが、考えてみれば4%成長を18年間続ければ、1.04の18乗ですから2倍を超えます。1991年~2014年という23年のスパンで見れば、それ以下の平均成長率で2倍の成長が出来るのです。日本は先進国になったので成長できないというのも思い込みに過ぎません。この20数年間、他の先進諸国は平均3~4%の成長を実現してきたのです。

日本は金融緩和には慎重、一時期を除けば財政も緊縮という姿勢を続けてきたが故に、「失われた20年」となり、結果、分母にあたる名目GDPが増えず、財政(政府債務対GDP比)が悪化したわけです。

そもそも、「税収=名目GDP×税率×税収弾性値」ですから、名目GDPが成長しなければ税収も増えないので、普通に考えれば分子にあたる政府債務は拡大します。そして縮小均衡という負の連鎖が続いてしまうのです。

 

日本は公共投資を1995年度比で56%(2014年)にまで減らしてきました。それによって、インフラの老朽化や自然災害への危機が増しています。昨今、地震や火山の噴火が続いていますので、実感されている方も多いでしょう。

一方、社会保障費は上昇を続けていますが、高齢化社会では仕方のないことです。医療や介護、防災など国民の命に関わる分野の支出は減らすべきではありません。無駄を省くのは結構ですが、防災や安全保障、介護や医療従事者の不足など課題はたくさんあるのですから、省いた分もより必要性の高いところに支出するべきです。

こういうと「民間の活力を」という声が聞こえてきそうですが、過度の民営化は安価な医療介護や教育、ライフラインの確保、生命を守る防災や安全保障の確立を阻害する結果になるでしょう。企業は単年度収益も気にしなければいけないからです。

それが(本来、利益を上げる必要はなく、長期的な視野を持たなければいけない)政府までプライマリーバランスの黒字化という聞き心地のよい言葉を使って、短期の歳入と歳出の差を気にするという今の風潮には首を傾げたくなります。

 

日銀のお二人だけではありません。消費増税の際、多くの識者が増税の影響は軽微であり、V字回復が可能だと唱えました。影響が予想を超えた以上、それを認め、後世のために4%の成長(日銀がインフレターゲットを実現してくれれば、実質は2%で達成できます)を目指して知恵を絞るべきだと思うのです。

 

  •  三橋貴明氏のブログ「世界一のお金持ち国家」

まだ、財政破綻が心配だという方は、経済評論家・作家の三橋貴明氏のこちらのブログをお読み下さい。

世界一のお金持ち国家|三橋貴明オフィシャルブログ「新世紀のビッグブラザーへ blog」Powered by Ameba

 

 <以下、一部抜粋>

『そもそも、日本政府はいざ知らず、日本国は「借金大国」であるどころか、世界一のお金持ち国家なのです。』

『「日本の借金」あるいは「国の借金」という表現を使うならば、政府の負債ではなく「日本の対外負債」になります。<中略>日本の対外負債は14年末時点で578兆4160億円です。確かに、日本は500兆円を超える「国の借金」があります。

とはいえ、日本は逆に945兆2730億円の「対外資産」を保有しています。結果的に、日本は366兆8560億円の対外純資産状態です。

純資産(=資産-負債)が多い人のことを「お金持ち」と言います。日本の対外純資産は、二位の中国の1.7倍に達しており、世界最大です。日本は「国家」として見た場合、世界一のお金持ち国家なのです。』

 

『日本政府は金融資産(外貨準備など)や固定資産(インフラなど)という資産を持っており、負債から資産を引いた純負債額は、500兆円程度に過ぎません。

ネットで見た「国の借金(正しくは政府の純負債)」対GDP比率は、100%程度で、アメリカと同水準です。そして、IMFなどの国際機関では、政府の負債はグロスではなくネットで見るのが常識なのです。』

(出典:ブログ『新世紀のビッグブラザーへ』)

 

など興味深い事実が書かれています。