社長の「雑観」コラム

MS&Consulting社長、並木昭憲のブログです。 未来を担うビジネスマンや学生の方々に向けて、 政治・経済・社会・経営などをテーマに書き進めています。

Vol.61 投票に行こう ~無関心の弊害~

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 前回の投稿で、選挙に向けて「第一に政治家の人品骨柄をみる。自分でわからなければ信頼できる人に聞いてみる。第二に自分の争点を考えて、その分野だけでも候補者や政党の主張と実現可能性を確認する。また、その政策がどのような負の影響を与えるのかも知っておくために、賛成派と反対派の両方の意見を聞いてみる」という趣旨の提案をしました。私自身30代の頃まではノンポリで選挙に行かないこともしばしばありましたので偉そうなことは言えませんが、今回は(できれば今回からは)忙しい中でも自分で考えた上で、投票に行って貰えればと思います。

 

1,“大義なき解散”キャンペーン?

 今回の選挙の特殊なところは、政治家やメディアが「大義なき解散」を煽ったことです。野党が政権の批判をするのはある意味当然ですし、政党によっては投票率が下がることで有利になるケースもあります。しかし日頃メディアは、その存在意義からも「国民の声を聞け」という主張をしているにも関わらず、今回は「大義なき解散」「争点がない」「選挙費用が無駄」「低投票率が予想される」といった投票へのモチベーションを下げるような報道が多数なされています。

 「郵政選挙」や「政権交代選挙」といった1イシュー選挙の時には、深く考えずに風に乗って投票する人が増えるのが本当に良いことなのかという疑問を持ちましたが、今回は逆にそういう「風に乗って」投票しない人が増えることが心配です。選挙の結果どういう政権が誕生するにせよ、こうした報道が溢れた選挙後、逆に「投票率が低かった」という批判報道を目にするのは癪ではありませんか。

 

2,日本を取り巻く環境① 安全保障

 加えて、我々を取り巻く環境は決して安穏としたものではありません。まず、現在の日本は国民の安寧を守る安全保障上のリスクが、世界でも有数に多い国です。

 「戦後の日本は平和を維持してきた」とはよく聞く話ですが、これには若干の留保を付けなければいけません。北朝鮮による拉致問題です。我々と同じ日本国民が外国に不当に誘拐・拉致され、未だに取り戻せておらず、まさに今、交渉が再開されています。我が身がたまたま安全だったからといって、この状況を続けていながら“平和”と言えるのでしょうか。

 そして、北方領土竹島では領土問題を抱え、尖閣諸島、さらに最近では小笠原諸島周辺まで中国人による領海侵犯が行われています。

 こうした外交問題では、国民が強い関心を示していることを相手国に伝えることも重要です。投票率の低下は国民の(政治や外交問題に対する)関心が薄れているという間違ったメッセージを送ることにもなりかねません。

 加えて、地震が多い上に巨大地震のリスクも高く、台風やゲリラ豪雨による水害・土砂災害、最近では大雪による被害など日本は自然災害大国です。もともとの国土条件や異常気象、さらに中国から飛来するPM2.5などの地理的な特殊要因と原因は様々ですが、それぞれの対策も施さねばなりません。

 更に、エネルギー安全保障。原発再稼働は意見が分かれるところでしょうが、どちらの立場をとるにせよ、中東や南シナ海などが不安定な状況にある以上、自前のエネルギー開発も含めてエネルギーのベストミックスを模索する必要があります。新エネルギー開発など数十年かかることもあるので早めに始めなければならないテーマです。

 

3, 日本を取り巻く環境② 長期のデフレ不況と人口減少

 先日発表された7-9月期のGDP二次速報では、対前期比が一次速報よりも下方修正となりました。消費税増税の悪影響は大きく、日本は依然として15年以上続くデフレ不況から立ち直っていないのです。こちらは国民の将来の豊かさの問題であり、安全保障を進める国力を保つためにも必要なことです。選挙にあたって考えるべきことは山積しているのです。

 経済に関しては、人口減少の中で日本経済は成長できないという自虐的な意見も聞きますが、英仏の人口は6,400万人前後、ドイツでも8,000万人強です。多少人口が減ったところで一人当たりGDPを増やすという道はあります。また日本の歴史上、人口減少期は今が初めてではありません。長期的に観れば、若者が安心して結婚し子どもを産む環境づくりのためにも「安定した雇用と所得をつくる」ことが第一です。様々な少子化対策を並行させる必要があるでしょうが、移民を増やさなくても、少子化を転換し静止人口の道を歩むことも可能な筈です。

 ところで、日本では人口減少(消費者減少)よりも生産年齢人口の減少(生産者減少)の方が先行していますので、将来、今とは逆に供給力不足になる可能性があります。今はデフレ脱却(=需要の拡大)が必要であり、将来はインフレ対策(=供給力の向上)が必要になるわけです。ということは、

(1)安全保障対策と将来の生産性向上のためのインフラ投資を公共事業で行い、今の需要不足を補って雇用を創り、所得を増やし、デフレ脱却に貢献する。

(2)防災対策は日本全国で行う必要があるため、(親族の協力等より子育てのしやすい)地方の活性化にもつながる。

(3)一方、目の前の問題である保育士や介護士を増やすための賃金上昇は政府が行える分野であり、その他の施策と合わせて子育てと介護支援を充実させる。

(4)必要な資金を日銀が金融緩和で補っても、デフレ脱却までは民間の資金需要が少ないため、金利はさほど上昇しない。

(5)将来インフレ対策が必要になった時に、完成した大規模インフラが生産性向上や企業の国際競争力強化に役立つ。

(6)景気が上向けば企業の投資が増え、民間主導による雇用・賃金の増加、生産性の向上に移行できる。

(7)好況になれば税収が増え、新発の国債発行額そのものを減らすことができる。

大雑把ですが、こうやってデフレを脱却して安全性も増し、適度なインフレの中で少しずつ豊かになり、人口減にも怯えない社会をつくるという未来も描ける筈です。

 

4, 無関心の弊害

 「そうは言っても自分の考えに合った政治家がいない」という意見もあるでしょう。その通り。私も随分悩みました。先のようなことを考えても、「緊縮財政派」が至る所にいるようで、「積極財政によって好況にすることが先決。その間も金融緩和によって日銀保有分を除く(利払いが必要な)国債発行額は抑えられる。その後、景気回復による税収増で財政健全化を進める」といった政策のタイミング、優先順位を示した政党が見当たらないからです。

 しかし、人によって意見が違うのは当然のことです。特に経済政策の面では「個人と政府」はあっても「国民」という概念が希薄な経済学が、ここ数十年主流派として幅を利かせてきました。国民意識が薄くなれば、自分に直接関係のない地域の災害対策やインフラ、景気対策には無関心になってしまいます。とはいえ、他国で起きた災害よりも東日本大震災を深刻・真剣にとらえた日本国民が大多数だったのではないでしょうか。国民意識というのはそういうもので、まだまだしっかりと根付いています。政策に影響を与える思想面での常識を少しずつ変えていくしかありません。

 今、香港では普通選挙を行うためのデモと強制排除が行われています。普通に選挙ができ、どうしても納得のいく候補がいなければ自ら立候補もできるというのは貴重な権利なのです。

 尊敬すべき候補がいないから無関心になる。無関心になれば、考えることをやめますから煩わしさからは解放されますが、その代わり良くなるものも良くなりません。少しでもよい候補(あるいは悪くない候補)を悩みながら選ぶ努力をしましょう。投票しない場合でも、投票に行った人たち以上に考えたけれども、敢えて投票しない道を選んだという積極的な理由を持って欲しいと思います。