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社長の「雑観」コラム

MS&Consulting社長、並木昭憲のブログです。 未来を担うビジネスマンや学生の方々に向けて、 政治・経済・社会・経営などをテーマに書き進めています。

Vol.32 2020年東京オリンピック開催決定と国土強靱化

 

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 社長の並木です。先日、2020年のオリンピック及びパラリンピックの東京開催が決まりました。今、このタイミングで7年後のオリンピック開催が決まったことを心から嬉しく思います。クーベルタン氏が提唱したオリンピック精神やスポーツの振興も大切ですが、同時に経済や国民意識の面で生まれうる変化に大きな意義を感じているからです。

 

  • 国土強靱化と公共事業悪玉論

 当ブログでも何度か取り上げてきましたが、日本は東日本大震災からの復興すら途上であるにも関わらず、首都直下型地震や南海トラフ地震の警鐘が鳴らされています。加えて、台風や異常気象、インフラの老朽化によって全国各地で被害が相次いでいます。

 そのため「国土強靱化」が叫ばれ、担当大臣や国土強靱化推進室、ナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会などが中心となり、省庁横断の検討が進められているようです。それにも関わらず、一方では「鹿や熊しか通らない道路」とか「土建国家の復活」といったレトリックで、いまだ公共事業を悪者にする風潮が残っています。誤解のないように書いておきますが、当社は建設業界の関連企業ではありませんし、私は癒着によって私腹を肥やす政治家や企業家は厳しく罰せられるべきだと思います。また、意味のない道路やインフラを作れと主張しているわけではありません。日本のB/C(費用便益)分析ではベネフィットを過少にしかみていないので、その中に経済成長は勿論、自然災害が多いという自国の特性を踏まえて防災への貢献も含めた上で、必要な公共投資をして欲しいというのが本意です。

 このような公共事業叩きによって、日本の建設業者は1999年の60万社から2011年には48万社まで減ってしまっています。

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出典:国土交通省:建設業許可業者の現況(平成24 年3 月末現在)

 日本全体は未だデフレ下でありながら、この分野では供給力が足りず、東北の復興が進まないといったことが現実に起こっているのです。企業家としては「需要があれば投資を」とは思うものの、単純作業の部分であれば非正規雇用の人件費増を覚悟すれば何とかなりますが、大規模工事にはノウハウが必要です。その上、15年間叩かれ続けていれば、今は需要があっても、政府は現状単年度予算しか組めませんので、直ぐに予算が削減されるのでは?と疑心暗鬼になって当然です。

 

  • オリンピックと国土強靱化の連動

 これに対し、東京オリンピックは7年後です。否応なく7年間の計画を組んで、(形式上は単年度なのかも知れませんが)予算を計上することになりますし、国際的に開催年を遅らせることも、会場建設が間に合わないという事態も許されません。

 何より明るい話題ですので、これまで何となく公共事業に反対していた人たちが、その必要性を改めて考える機会にもなりうるでしょう。

 政治的なリーダーシップで、オリンピック計画と国土強靱化プランを上手く連動させ、新たな国土計画とそのための複数年度予算を組むことができれば、経済情勢は一変すると思います。公共投資に対するマインドの変革を促すだけではなく、各地域の強靱化対策の繁閑に合わせて五輪準備の仕事も担ってもらうなど、どうしても首都圏と一部の地方会場に集中するオリンピックの経済効果を、全国に拡げていくことも可能かもしれません。

 

  • 日本の成長・安心のために地方の景気回復は欠かせない

 そもそも、今懸念されている大規模地震は、太平洋ベルト地帯を直撃しますので、東京・名古屋・大阪の大企業もBCP(ビジネス・コンティニュー・プラン:有事に事業を存続させるための計画)を考え、地方分散も視野に入れなければなりません。東京に有事があった際に経済的にも支えてくれる「地方」はそこに住む人だけでなく、都市部の住人・企業にとっても必要なのです。

 当社は経済産業省主催の「おもてなし企業選」のご支援をさせていただいていますが、全国各地にそれぞれの地域に根ざし、ES(社員満足)とCS(顧客満足)、更にはその地域の発展に貢献していらっしゃる企業は数多くあります。確かに利便性では都市部に劣るでしょうが、その面も含めた政策の後押しがあれば、地方を活性化させることも十分可能なはずです。

 オリンピックは世界的なイベントですが、それによる経済効果は、インフラや観光に代表されるようにほとんどが日本国内での需要ですので、企業の目をグローバルから「日本の成長」に向ける契機にもなります。「国土強靱化」と「オリンピック招致」によって東京だけではなく地方にも経済効果が波及することを切に願っています。

 

 1964年の東京オリンピックでは、国立競技場や日本武道館といった会場はもちろん、東海道新幹線が開業、羽田空港が整備され、モノレールができ、首都高速の一部や環七のような街路が作られました。その流れに沿って全国で新幹線網・高速道路網が整備され、今、我々は生活や企業活動でそのインフラを享受しています。それを思い出すだけでも、我々が普通に使っているインフラは先人達が努力し残していってくれた遺産であり、少なくとも公共事業=悪玉という単純な話ではないと実感できる筈です。

 恐らくこれまでもそうだったように、部分的には不正や疑問のあるものも出てくるでしょうが、それはそれで批判するとして、今回のオリンピックによる投資、国土強靱化の投資の大部分は、我々の将来と子孫の生活に繋がっていくのです。