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社長の「雑観」コラム

MS&Consulting社長、並木昭憲のブログです。 未来を担うビジネスマンや学生の方々に向けて、 政治・経済・社会・経営などをテーマに書き進めています。

Vol.30 不安定な資本主義 ~バブル崩壊の歴史~

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 社長の並木です。今回は資本主義の不確実性とバブル崩壊の歴史を考えてみたいと思います。消費者や企業家の心理によって、過剰期待からバブルが発生し、不安から投資がしぼみバブルが崩壊するという資本主義の持つ不確実性を指摘したのはケインズでした。

 

  • バブル崩壊の歴史と世界のGDPに与えた影響

 実際、近年の主なものに絞っても、

1987年 ブラックマンデー

1991年 日本のバブル崩壊

1997年 アジア通貨危機

2001年 ITバブル崩壊

2007年 サブプライム危機

と経済危機が頻繁に起こっています。それが世界に与えた影響をみるために1985年以降の世界のGDPの推移をご覧下さい。

 

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  出典:世界銀行 Google Public Data Explorerより

 

 主なバブル崩壊が起こった年とこのグラフを比較すると、今回の世界不況がどれほど深刻なのかがよくわかります。

 ためしに日本のバブル崩壊をみてみましょう。日本一国の名目GDPの推移はこのようになっています。

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日経平均株価のピークは1989年末。1991年には地価の下落が始まります。こうして資産価値が暴落しながらも、財政出動などによって1997年の緊縮財政・消費増税までは名目GDPをマイナスさせることなく、何とか凌いでいたのです。同じ時期、世界は1990年:東西ドイツ統一。1991年:ソ連邦崩壊、湾岸戦争勃発という激動期でもありましたが、日本のバブル崩壊が世界に波及した様子は感じられません。

2001年のITバブルになると、若干ではありますが世界的な影響がみられます。ITバブル自体が世界的な出来事だったので当然です。加えて、同じ年にアメリカで同時多発テロが起こった影響もあるかもしれません。

 

ITバブル崩壊、今回の世界同時不況と、グローバル化及び金融資本主義の進展と共にバブル崩壊の影響は大きく、且つ広範囲にわたるようになります。ユーロは依然として有効な対策を打ち出せていませんし、最近では、リーマンショックによる世界の需要不足を、不動産への過剰投資で凌ごうとしてきた中国のシャドーバンキング問題とバブル崩壊、新興国からの資金流出も叫ばれており、まだまだ混乱は続くものと思います。

 

その中で日本のアベノミクスは大変注目され、また評価されています。前回もご紹介したコロンビア大学の経済学者スティグリッツ教授は、現代ビジネスブレイブへの寄稿の中で、

「日本のこの10年の成果を全くの失敗と見る人々は、経済的成功というものを非常に狭くとらえている。より大きな所得の平等、より長い平均余命、より少ない失業、子供の教育と健康へのより大きな投資、労働力人口に照らしてみた場合のより高い生産性などを含め、多くの面において日本は米国よりうまくやってきた。

 日本がわれわれに教えることは、非常に多い。もしアベノミクスが、その支持者たちが望む半分でも達成できたなら、われわれは、日本からさらに多くを学べるだろう。」

と語っています。アベノミクスへの期待と共に、同じ原稿の冒頭で、

金融危機が米国経済にダメージを与えてからの5年間、米国政府に強力な方策をとるよう提言してきた(私自身を含む)人々の主張は、米国が長期にわたる“日本型の沈滞”に陥る危険を冒しているというものであった。1989年の破綻にはじまる20年に及ぶ日本の成長停滞は、金融危機の悪い例を示す典型的な教訓となった。」(出典:いずれも『現代ビジネスブレイブ』 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36441

と書いている日本のデフレ下での政治経済情勢さえ、ある程度の評価をするような内容になっていることに驚かされます。それだけ、世界経済には根深い問題が存在するということです。実際、米国の医療や教育制度、所得格差は大きな問題を抱えていますし、ギリシャ・スペインをはじめとする国々の失業率には目を覆いたくなります。

日本が長期のデフレ下で、「より大きな所得の平等」や「少ない失業」を維持できていることには複数の要因があるでしょうが、その一つに日本の経営者や株主が、節度を保ち社員を大切にしている、あるいは個人の欲を抑制する文化的背景が存在していることがあげられます。私もそうした常識を最後まで失わずに、経営に携わっていきたいと思います。

 

前回のトリレンマ理論を思い出して欲しいのですが、苦境の中ではある程度、自国の経済を守るため、グローバリズム抑制の動きが出てきます。WTO違反になるようなあからさまな保護主義は外交上の軋轢を生みますので考えものですが、そうした動きは国家主権や民主主義が守られているということの証でもあります。

新自由主義を生み、グローバル化の推進役であったアメリカでも、2013年2月の一般教書演説でオバマ大統領は、「米国内の製造業雇用復活」を謳い、国内製造業に対する支援や、企業の国内投資を奨励する為の企業税法の改正を提案しています。

米国製造業は1980年代から30年間空洞化を進めてきたのですから、そのギャップは簡単には埋まりません。技術が伝承されていない。後継者がいないというのは、新自由主義の好むグローバルな競争で、彼らが重視する供給力を削ぐ結果になりますので、「国民経済(国内)」的に考えるとパラドックスなのです。とはいえ、民間が不況期に投資をするのは容易ではありません。日本でも投資減税が考えられているように、官民一体となって投資を行うことが直近の雇用と、10年後、20年後のリターン(GDP=所得の成長、イノベーションによる需要創造、供給力の向上)を生みます。

ほとんどの先進国の喫緊の課題は「雇用不足」であり、それによる所得不足、そして需要の不足です。この問題は、失業は自発的なものか、雇用とのミスマッチであるとする新自由主義では解決できません。当たり前ですが、現実には就業希望者よりも雇用が少ないという状況もあるのです。また、世界は既にグローバル化一辺倒の動きだけではなくなっています。

 

世界各国が新たな経済運営を考える時期にあり、特に先進国は内需や国内雇用の拡大を目指す必要性が増すでしょう。アベノミクスは、特に第二の矢(財政出動)を軸に、そのロールモデルになり得ます。恥ずかしい話ですが、デフレ脱却の失敗体験は他国より多いのですから、それを教訓に需要不足下での経済政策に成功することができれば、世界にとっても朗報となるはずです。