社長の「雑観」コラム

MS&Consulting社長、並木昭憲のブログです。 未来を担うビジネスマンや学生の方々に向けて、 政治・経済・社会・経営などをテーマに書き進めています。

Vol.22 大きな一歩 ~大胆な金融緩和~

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社長の並木です。44日に黒田新総裁の下で初めての日銀金融政策決定会合が開催され、文字通り大胆な「量的・質的金融緩和」が打ち出されたことで、市況が大変好反応を示しています。

 

  • 異次元金融緩和の概要

異次元緩和という言葉が新聞紙上などで踊っている通り、2年程度で2%の物価上昇目標を達成するために、従来の金利から「マネタリーベース(通貨供給量)を2年間で2倍」へと指標を変え、年70兆円前後の新たな円を金融市場に供給していくそうです。その為に買い入れる国債の残存期間も長期化する上、上場投資信託やJ-REITなどのリスク性の資産も買い増すとのこと。更に「経済も金融も生き物なので、その時々の状況を見て、必要があれば躊躇なく調整していく」と発言されるなど、ほぼ満額回答であったため、市況の好感は十二分にわかります。

また、日銀人事決定後、政策決定会合に参加する日銀審議委員の過半数が金融緩和に消極的と見られていたため、期待と不安が交錯していましたが、ふたを開けてみれば(一部を除いて)全員一致で今回の政策が決定されました。それにより、黒田東彦新総裁・岩田規久男新副総裁という新体制がしっかり機能するという安心感が拡がったことも影響しているのでしょう。

これによってアベノミクスの第一の矢(金融緩和)は大きく放たれたことになります。

 

次は第二の矢(財政出動)です。金融緩和によって、金融市場は沸き立ちました。今回のサプライズを織り込んだ後は沈静化するでしょうが、これまで「too little too late(あまりに小さくて遅い)」と言われることも多かった日銀が、インフレ目標の安定達成を実現するまでは大幅な通貨供給を続けるのですからプラス基調が続くでしょう。以前もお話しした通り、それを出来るだけ早く実体経済に持ってくるのが財政出動です。

2月に可決した補正予算の実行。そして、新年度予算の成立が行われれば、こちらも着実に進んでいくものと思われます。メディアに叩かれがちな財政出動を公約にして選挙で大勝した上、今の日本には「東日本大震災の復興」「今後起こりうる地震・災害への防災対策」「インフラの老朽化対策」、直近では「東アジアの不安定な情勢を踏まえた安全保障対策」「PM2.5鳥インフルエンザなどによる健康被害防止策」など政府(国家)が動かないといけない問題が山積しているのですから。

 

  • そして所得の上昇へ

その次は「所得の上昇」です。小泉政権時代に「実感なき経済成長」といわれた時期がありました。2000年代半ば、名目GDPは微増しているにも関わらず、平均給与が逆に下がってしまった時期であり、バブル崩壊前のアメリカの需要獲得に向かって、輸出が増加していたグローバリズムの最盛期のような時代です。その轍を踏んではいけません(グラフ1参照)。

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「株が上がっても富裕層しか得をしない」とか「(円安による)値上げの春で家計が苦しくなる」という記事を見かけますが、余りに視野の狭い意見です。金融市場は将来期待で動き、実体経済は(金融と比較すると)期待の確からしさが高まってから好況が本格化するのであって、その逆の順番ではないのです。所得の面では今後、非正規雇用の方の給与が最初に上がり、その次が賞与、そして定期昇給という順で上がっていくのが一般的ですが、既に今年の春闘で一時金(賞与)に関しては多くの企業でプラス回答が出たり、新卒の内定率が上がったり(失業率が下がることも、国民全体の所得の増加に大きく影響します)しています。

私は、日本も「グローバリズム新自由主義に大きな影響を受けており、それらの企業では人件費という主要コストを下げることが競争力を増すことになる」といった指摘をしています。それは「日本人の平均賃金の減少」「株主への配当率の上昇」「対外直接投資の増加」といったデータから見てとれるのですが、他国と比較すれば配当率や経営者と社員の所得格差も小さく、より長期の不況を経験していても失業率は低い方です。会社・経営者の姿勢、労働者保護に対する規制や文化的慣習はまだ生きています。

当社はサービス業の企業に対してES(社員満足度)を高め、彼らがやり甲斐を持って働き、改善に取り組むことでCS顧客満足度)が上がり、それが業績に貢献するという「サービス・プロフィット・チェーン」の体現に向けた組織風土づくりのお手伝いをしている会社ですので、仕事柄、多くの経営者が社員を大切にし、長期的な成長を重視していることを知っています。「より多くの需要を創造し」「より多くの雇用をつくり」「社員のやり甲斐を高め」「会社と社員が共に豊かになっていく」という『経営者の矜持』を持っている、尊敬すべき経営者はたくさんいます。そして、そのような企業が動けば、他社も追随しないわけにはいきません。

 いよいよデフレ脱却への道が観えてきました。政府が正しい経済政策を打ち出してくれているのですから、メリットを享受する多少のタイミングの差にルサンチマン(妬み・恨み)を抱くより、「商品・サービスの生産者」=「給与所得者」=「消費者」として前向きに動き、失われた20年を取り戻しましょう。