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社長の「雑観」コラム

MS&Consulting社長、並木昭憲のブログです。 未来を担うビジネスマンや学生の方々に向けて、 政治・経済・社会・経営などをテーマに書き進めています。

Vol.12 「日本を取り戻す」

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アベノミクスの3本柱

社長の並木です。コラムのタイトルは、現安倍政権が衆議院議員選挙で使ったキャッチフレーズです。

「日本を取り戻す」。この言葉を使って選挙に大勝したということは、大きな国民意識の転換があったのだと思います。「取り戻す」ということは「何から?」という思考に繋がります。決して一つの相手といった単純なことではないようですが、思考を高める機会となると思いますので、考えてみてはいかがでしょうか。
列島強靱化の提唱者であり、今回内閣官房参与になられた京都大学の藤井聡教授の著作である『維新・改革の正体―日本をダメにした真犯人を捜せ』(産経新聞出版)も参考になるかもしれません。

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「平均給与の上昇による税額控除」と「雇用促進税制の強化」の効果

さて、安倍政権は設立以来大変なスピードで現況に即した政策検討を進めています。アベノミクスといわれる経済政策は

  • 金融緩和(新聞等で日銀との関係で語られる内容です)
  • 財政出動(地震対策等の公共投資です)
  • 産業政策(これはまだ方向性が確立していないようです)

の三つを柱としたものです。まだ不明瞭な部分もありますが、何しろ内閣発足後一ヶ月も経っていません。これまでは何だったのか?と思えるほどのスピードで進んでいることは、反応の早い金融市場にて株価の上昇・円安の進行が進んでいることを見ても明らかでしょう。
その中で、私がなるほどと特に感心した政策は、地味ですが「平均給与の上昇による税額控除」です。これと「雇用促進税制の強化」がミックスされれば、これまで「経営者の矜持(誇りや自覚)をもって従業員の給与アップをさせていかなければ」とお話ししてきたことが後押しされます。

財政出動によってお金の行く先を決めることで、実体経済に振り向けることが可能

そもそも、量的緩和を長期間続ければ(特に日本はこれまで欧米の金融緩和に対して無策だったので)円安は進行します。それは輸出企業の業績を助け、国内の雇用促進の余地を増やすことにはなるのですが、緩和されたお金の行く先を特定することはできません。そのため、そのお金は投機に回りやすく、米国のリーマンショック後の大型金融緩和などの影響でガソリンや小麦の価格が高騰したような事態が起こりかねません。

そこで、財政出動によってお金の行く先を決め、実体経済に振り向けることで景気上昇に直結させるのです。子ども手当のような給付型の財政支出は、貯蓄に回されてしまえば国家の経済(GDP)に好影響を与えませんが、公共投資の場合は100%GDPの上昇につながります(ただし、土地取得のための費用は除かれます)。

その上、雇用が増え給与が上がれば、その人たちや企業が消費を増やす事によって乗数効果というものが生まれ、更に景気を後押しします。そのため、デフレ脱却には金融緩和・財政出動のセットが効果的ですし、同時に震災復興や将来の自然災害に対する備えが必要な我が国には適していると考えていました。

デフレ対策が給与上昇に繋がるまでには時間差がある

ただ、同時に不安があったのは、

1.円安、株高で好況感が生まれ、公共投資によって実際の需要も生まれる
  ↓
2.需要に対応するべく雇用が促進され始める
  ↓
3.乗数効果によって周辺業界の業績も上がる
  ↓
4.労働市場の需給バランスが変わり、失業率の低下や給与上昇が起こる

という連鎖が起こるまでは時間差があることです。以前、小泉首相が「痛みに耐えて」と言ったときに多くの国民が絶賛していましたが、デフレ下でインフレ対策を打つ構造改革に対して耐える「痛みの期間」というのは無限大です。今はデフレ下でデフレ対策が打たれているので、ある程度の期間で済みますが、何しろバブル崩壊後20年、デフレ突入後15年を経ている国です。普通に考えて数年はかかるでしょう。

実際に所得が増え始めるまでは、円安で輸入品の価格が上昇するという「痛み」を凌がなければなりません。痛みは嫌だと待ちきれなければ、元に戻ってしまいます。「その期間を出来るだけ短くしましょう」というつもりで書いた言葉が、「経営者の矜持」というメッセージだったのですが、その懸念を政策サイドもわかっていて、後押し策を考えてくれた訳です。我々国民が今少しの忍耐を持つことが出来れば、デフレ脱却が現実のものとなりそうです。

オーナーシップの大切さ

企業でやり甲斐を高める要素の一つに「オーナーシップ」を持つということがあげられますが、国家も同じなのかも知れません。何年か前までノンポリだった私が自戒をこめて申し上げますが、我々は政治を軽視しすぎていたのでしょう。正しい政策が行われているか否かを考え、発言し、一方で様々な政策が影響を生み出すためには時間がかかることも認識するという覚悟・常識がこれまで以上に大切な一年になるように思えてなりません。