社長の「雑観」コラム

MS&Consulting社長、並木昭憲のブログです。 未来を担うビジネスマンや学生の方々に向けて、 政治・経済・社会・経営などをテーマに書き進めています。

Vol.9 「人口減少と経済成長」~少子高齢化は避けられないのか~

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ポイント:「少子化の解消」は起こり得る未来

  • 人口減少局面でも経済成長は十分可能。
  • 少子高齢化は「デフレ」の原因にはならない。
  • 現在の少子化の原因はエネルギー問題、それに加えて景気の悪化等による「将来不安」。
  • 様々な課題を乗り越えていけば、「人口減少からの反転」も起こりうる未来である。

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社長の並木です。今回は「人口減少と経済成長」について考えてみたいと思います。というのも、親しい人とデフレ脱却の話をすると、時折「でも、日本は少子高齢化だから…」「人口が減るでしょう?」という懐疑的な言葉が返ってくることがあるからです。
 
■前提:少子高齢化とデフレは関係がない
 
最近「デフレの原因は少子高齢化である」という言説があるようですが、常識的に考えて少子高齢化により労働人口が減るのであれば供給力が弱まり(インフレ圧力)、職に就かない高齢者が増えても需要は維持されるため、逆にインフレ傾向に向かうはずだと説明できます。
 
また、G8諸国の中で人口減少に陥っている国は日本だけでなく、ドイツ・ロシアを含めた3カ国です。【表1】【表2】はドイツの人口がピークだった2003年からのG8諸国の人口とGDPの伸縮率をまとめたものです(※)。減少局面に入ったのはロシア→ドイツ→日本の順ですが、これを見ると特に相関はなく、緩やかな人口減少を超える成長は可能なように思えます。
※ロシアに関してはGDPの成長率が表に収まりきれませんでしたので、ご容赦ください。但し、ソ連邦崩壊の影響や資源輸出の多い国であるという側面がありますので、ある程度割り引いて考える必要があります。
 
内閣府の高齢社会白書で2050年の推計人口が97,076千人、2060年が86,737千人と書かれているのを見ると暗い気持ちになってしまいますが(http://goo.gl/qxtn2)、年間100万人の人口減少ということは、おおよそ総人口の1%ですので、その分生産性向上か、外需獲得か、緩やかなインフレがあれば、実質・名目GDP共に成長できるとも考えられます。
 
■現在の少子化の原因は、エネルギー問題と景気の悪化等からくる「将来不安」
 
統計を観ると、日本の人口減少は2009年から起こっており、出生率の低下は1974年から顕著になっています(参考:http://goo.gl/r3F5d)。
 
1973年は第一次オイルショックが起きた年です。当時私は小学生で田舎に住んでいましたので実感はありませんが、それでもトイレットペーパー買い占め騒動や狂乱物価という言葉、あるいは石油があと30~40年で枯渇するとテレビで報道されていたことを思い出します。
 
歴史人口学者である上智大学の鬼頭宏教授は、

  • 日本が人口減少局面を迎えたのは今回がはじめてではなく4回目。人口は増加と停滞・減少を繰り返している。
  • 人口減少の主な要因は食料とエネルギーの生産量である。
  • 現在の人口減少の大きな要因はエネルギー問題であり、1973年のオイルショックが引き金となっている。同年は高度成長が一段落し、国民の将来への期待感が急速に失われた時期でもある。将来を悲観する国民の心理が人口変化に影響している。

という主旨の事を仰っています。

少子化の引き金になったとされるオイルショックの前年には、ローマクラブが資源の有限性や食料生産量が人口増に追いつかないといったことに触れ、「人口増加や環境汚染などの現在の傾向が続けば100年以内に地球上の成長は限界に達する」とした『成長の限界』を発表していますので、世界的に将来や人口増加に対する不安が高まっていた時期でもあるのでしょう。
 
現在に目を転じ、将来悲観という観点からサブプライム危機以降、米国及びヨーロッパで危機に陥った国について調べてみると、やはり出生率は記載の年を境に低下しています。
2007年:アメリカ
2008年:アイルランド・スペイン・イタリア・ポルトガル
2009年:ギリシャ・アイスランド
 
こうして見ると、「エネルギー問題や景気の悪化等からくる将来不安が少子化の原因になり得る」ということは言えそうです。
 
■「少子化の解消」は起こり得る未来
 
「少子化は必然なので移民を推奨する」という論者もいますが、人口の反転が起こり得ることは過去の歴史も証明している上、多文化共生主義という名のもとに移民を増やしたことで混乱に陥っているヨーロッパの状況をみると、懐疑的にならざるを得ません。歴史に育まれた文化・習慣・言語というのはとても重いものなのです。
 
晩婚化や核家族化、女性の社会進出という習俗の変化の影響は確かに大きな壁ではありますが、常々お話ししているデフレ脱却による経済成長がなされ、それに伴って社会保障が安定し、更に国家・企業・地域の共同体による出産・育児への支援対策と企業による雇用の安定・給与の向上等によって、将来への期待が膨らみ、子育てへの不安が減れば、「少子化の解消」は起こりうる未来であると考えられます。
 
1970年代にあと30~40年と言われた石油が依然として枯渇していないように、予測は覆せない真実ではありません。より良い将来を築く希望を持ち、問題解決に向けた努力を続けることが何よりも大切だと思います。