社長の「雑観」コラム

MS&Consulting社長、並木昭憲のブログです。 未来を担うビジネスマンや学生の方々に向けて、 政治・経済・社会・経営などをテーマに書き進めています。

Vol.6 「グローバル化が国内企業にもたらす弊害」~給与の低下と失業について~

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★ポイント…自国及び世界の環境を十分に考慮した「適度な」グローバル化が望ましい

  • 日本の平均給与は消費税増税があった1997年以降減少傾向にある
  • デフレ、円高、石油・天然ガス価格上昇下での輸出促進は人件費削減への圧力になる
  • 「ヒト」のグローバル化によって国内の職がなくなる
  • 「カネ」のグローバル化が進むと短期利益・高配当を求められる

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社長の並木です。これまでの内容と重なる部分も多いですが、今回と次回は「給与の低下」「失業」という切り口で経済状況を見直してみたいと思います。
 
国税庁のデータによりますと、日本の平均給与はデフレの発端となった1997年(消費税増税や6大改革が始まった年)の467万円を境に、2011年には409万円まで落ち込んできています【表1】。その最大の要因が「デフレスパイラル」であることは第3回「企業は環境適応業である」で述べました。
 
それと並んで給与の減少に影響を与えるのが「グローバル化」です。
「モノ」が自由に動くようになると、当然輸出入が増えます。特にリーマンショックまではアメリカの旺盛な個人消費が世界の経済成長を支えていたといっても過言ではない状態でしたので輸出が伸び、一方で円高が進んで輸入が伸びました。日本はGDPに占める輸出入の割合がアメリカ、ブラジルと並んで主要国の中で最も低い部類に属するのですが、それでも2004年頃から輸出入額が増加しています【表1】。

注意したいのは、円高で新興国が存在感を増し、海外から安い製品が輸入されるというのは、言い換えればデフレが促進されるということです。
また、アメリカに牽引された世界経済の拡大というチャンスがあり、一方、国内はデフレ(物価下落)、円高、石油・天然ガス価格の上昇という危機を抱えた企業が行うことは何でしょうか。ここで、「底辺への競争」という現象が起こってしまいます。

まず、デフレですのでエネルギー価格の上昇を価格に転嫁出来ません。また、輸出では円高によって他国の製品より価格競争力が下がってしまいます。
そこで、「給与というコスト」を下げざるを得なくなり、更には、より安価な人件費を求めて途上国に工場を移す(国内の職がなくなる)ということが行われてしまいます。これがグローバルな「ヒト」の移動ということの一側面で、途上国の低賃金労働者との人件費競争に陥ってしまうのです。

先日、ドイツの有名な戦略・政策コンサルタントの方のお話を聞いたとき、「2000年台の好況期、ドイツは他の先進国と比べて人件費を上げなかった。それによって国際競争力が高まった」という主旨のことを仰っていました。正直だなぁと変に感心してしまったのですが、「人件費を下げることがグローバル企業にとっての競争力となる」のです。

ただし、第3回「企業は環境適応業である」で述べたように、給与の低下や失業は更なるデフレの要因となります。加えて、「カネ」のグローバル化が進むと短期の利益、それによる高配当を求められる傾向があり【表2】、これまた給与低減の一因となってしまいますので、そのままではなかなか抜け出せない蟻地獄に落ち込んでしまいます。
 
こういう面からも、一概に自由貿易が良いという訳ではなく、自国及び世界の環境を十分考慮した「適度な」グローバル化が好ましいわけです。
 
次回は、「給与が減る」「職を失する」とはどういうことなのかを考えながら、働くことの意味や企業・政府の役割などにも触れてみたいと思います。